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高齢者の外出機会が増えた!「日本一歩かない県」に起きた“奇跡”

ビジネス

 過疎化や高齢化は日本社会が抱える大きな課題だ。とりわけ経済・産業活動の縮小が著しいのが地方である。さまざまな対策が各自治体で講じられているが、日本で一番人口が少ない県・鳥取県ではある興味深い取り組みが行われている。

鳥取

(※画像はイメージです。以下同じ)

 それが日本財団が鳥取県と2016年に発足した「みんなでつくる“暮らし日本一”の鳥取県」の共同プロジェクトだ。日本財団の鳥取事務所所長として本プロジェクトにかかわってきた木田悟史氏は、2016年より鳥取県に移住し、住民たちとの交流を重ねるなかで2022年までの6年間で、250を超えるプロジェクトを推進してきた。そこから見えたキーワードは「濃いつながり」「おせっかい人材」「学びの場」だという。

 今回は木田氏の著書『みんなでつくる“暮らし日本一”「鳥取県×日本財団共同プロジェクト」から学ぶまちづくりのヒント』の内容から、実際に推進されたプロジェクトのひとつである「UDタクシー」の導入について紹介したい(以下、同書より一部編集のうえ抜粋)。

新しい公共交通モデルを構築

「UDタクシー」といっても、まだピンとこない方もおられるかもしれません。まずはその説明をしましょう。先にも述べましたが、UDとはUniversal Design(ユニバーサルデザイン)の略で、文化・言語・国籍・性別・年齢の違い、障がいのあるなしにかかわらず、だれにでも使いやすいデザインになっていることです。

 つまりUDタクシーは、障がいのある方、ご高齢の方、病気やケガをしている方、妊娠している方、あるいはたくさんの荷物を抱えている方など、なんらかのハンデのある方でも安心して乗れる仕様になっているタクシーです。

 介護タクシーもありますが、こちらは主に介護保険の適用を受けられる人を対象にしたもので、何よりいちばんの違いは介護タクシーが通常は会社の営業所で待機、利用する際は事前予約が基本となるのに対し、UDタクシーはまちなかを流していたり、駅や大型施設前のタクシー乗り場に停車していたりで、一般の方、健常者もこれまでのタクシー同様に、同料金でふつうに乗れるものです

車イスに乗ったままでも乗車できる

鳥取県

車イスに乗ったままでも乗車できるユニバーサルタクシー

 介護タクシーが専門性をもつ福祉車両であるとすれば、UDタクシーはオールマイティな乗り物と言えるでしょうか。従来のタクシーのセダンタイプと違い、ワンボックスタイプでドアが左右に動くスライド式、乗降口に手すりや足をかけるステップがついていることなどが特徴で、車イスの方が車イスに乗ったままでもタクシーに乗れるようになっています

 日本ではトヨタと日産が生産しており、トヨタ車をジャパンタクシーとも呼ぶので、その愛称のほうに馴染みをもつ方もおられるかもしれません(日産NV200バネットは2020年に製造中止)。

 車イス乗車スペースに大きな荷物を積むこともできるので、スーツケースで移動する外国人観光客などへの利便性が高いことからも、そしてもちろん、多様性を大事に社会的弱者にしっかり目配りするということからも、「2020東京オリンピック、パラリンピック」開催に向けて国土交通省が導入に力を入れたので、首都圏や近畿圏などでもUDタクシーの数が増えてきました。都会ではUDタクシーということを知らずに、あるいはそのことをさほど意識せずに乗車される方が多いかもしれません。

みんなでつくる“暮らし日本一”「鳥取県×日本財団共同プロジェクト」から学ぶまちづくりのヒント

みんなでつくる“暮らし日本一”「鳥取県×日本財団共同プロジェクト」から学ぶまちづくりのヒント

キーワードは「濃いつながり」「おせっかい人材」「学びの場」!“暮らし日本一”をコンセプトに推進されたプロジェクトでは何を拓き、何を成し遂げ、何を学んだのか?6年間にわたるその全貌は多種多様なヒントに溢れている

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