『イカゲーム』のゲームは「カイジ」みたいな頭脳戦じゃないのになぜウケるのか
止まらない大ブーム『イカゲーム』。傑作韓国ドラマ『愛の不時着』『梨泰院クラス』を超えてNetflix最大のヒット作になっている。魅力のひとつに「作中ゲームの多彩さ」を挙げるのは、漫画、ドラマなどエンタメ大好きのライター・ さわだ(@sawadachann)。
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もともとは日本で育ったジャンル「デスゲーム」(『バトル・ロワイアル』『カイジ』シリーズなど)をフォーマットにした韓国ドラマ『イカゲーム』には、どんな進化が起こっているのか(※以下、さわだ氏寄稿、ネタバレを含みます)。
Netflix史上最大のヒットとなった
およそ90か国で視聴ランキング1位を獲得し、Netflix史上最高のヒットとなった韓国発の『イカゲーム』。金に困った人々が1箇所に集められ賞金のために命を賭けて『イカゲーム』に挑む。死に物狂いで子ども時代の遊びに興じる姿や、韓国ドラマらしい重厚感のある演出が魅力となっている。
配信開始(9月17日)から2か月が過ぎようとしているが、いまだに勢いは衰えることを知らず、流行り物に腰が重い層すらも「そろそろ観ておくか」と動き出している印象だ。
『イカゲーム』を視聴して以降、僕は会う人会う人に(作中の)どのゲームが1番好きなのか聞くようにしている。これが面白いことに意見がキレイに割れるのだ(あくまで個人の調査結果)。しかも、同じゲームを好きと言った人の中でも理由が異なったりと、楽しみ方が違っていたりもする。なぜそんなことになるのだろうか?
描かれるのは、頭脳戦ではなく人間ドラマ
日本制作の同じようなジャンルである『カイジ』シリーズや『LIAR GAME』は、複雑な心理戦や頭脳戦がメインで描かれる。体力バトル要素の強い『バトル・ロワイアル』や『今際の国のアリス』でも、やはり力が強いモノが単純に勝つというわけではなく、駆け引きの部分が面白みとなっている。
一方の『イカゲーム』は、頭脳戦というニュアンスは薄い。その代わり、韓国の経済状況や貧富の差などを背景に持った登場人物たちの人間性が強く描かれている。ケンカが強い、頭がいい、決断力がある、などのデスゲームにおける「武器」だけでなく、性格の部分を表現するために時間が使われている。感情移入をしてしまうキャラクターも人によって分かれやすい。
そのためゲームの決着理由はシンプルな味付けで成立する。頭脳戦にこだわらない作りであることから、ゲームそれぞれの面白みに多様性が生まれやすいのだ。