少女を誰が殺したのか?アメリカの隠された真実に迫る話題作
アメリカにトランプ大統領が誕生してから早くも1年半が経過。何かと賛否両論を巻き起こしながらも、NBCなどが行った最新の世論調査によると、現在は45%という就任以来最高の支持率を記録しているそうです。
「まさにアメリカン・ドリーム」といいたいところですが、その反面まだまだ多くの問題が残されているのも事実。そこで今回は、アメリカの抱える闇に迫った注目作『ウインド・リバー』をご紹介します。
閉ざされた土地で事件は起きた
アメリカ中西部に位置し、ネイティブアメリカンの保留地として知られるウインド・リバー。山に囲まれ、深い雪に覆われた土地で、ある日、ネイティブアメリカンの少女が遺体となって発見されます。
第一発見者で野生生物局のベテランハンターのコリー・ランバートは、娘の親友が被害者であることに胸を痛めるのでした。
その後、FBIから派遣されたのは、新米の女性捜査官であるジェーン・バナーひとりだけ。雪山という厳しい環境下での捜査は難航し、ジェーンは地元に詳しいコリーに協力を求めることに。
2人で事件の真相を追うことになりますが、そこには思いがけない結末が待ち受けているのでした……。
アメリカの隠された真実に迫る!
今回監督デビューを飾ったテイラー・シェリダンは、脚本を手掛けた『ボーダーライン』(’15)と『最後の追跡』(’16)に本作を含めて“フロンティア3部作”と呼んでいますが、いずれもアメリカの抱える社会問題に鋭く切り込んでいる話題作。
『ボーダーライン』ではアメリカとメキシコ国境の麻薬戦争、『最後の追跡』ではテキサスの廃れた田舎町で銀行強盗を繰り返す兄弟とそれを追うテキサス・レンジャーとの攻防、そして本作ではネイティブアメリカンの保留地を舞台に描いています。
フロンティアとは、アメリカの西部開拓時代に最前線であった辺境地域のことを指していますが、ネイティブアメリカンたちにとっては侵略の最前線。それゆえに本作では、荒れ果てた保留地での生活を余儀なくされた先住民たちの貧困にあえぐ姿も生々しく映し出されているのです。
監督によると、保留地ではガンよりも殺人による死亡率が高く、少女たちにとって強姦は大人の女性になる通過儀礼とみなされているほど。日常生活で身の危険を感じることのない日本に暮らす私たちにとっては、にわかには信じがたい現実です。
劇中でも、女性に対する性犯罪や根強い差別、蔓延するドラッグ問題など、アメリカの歴史が生み出した“負の遺産”を目の当たりにすることになるのです。