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LINE記録などから「ソニー駐在員の突然死」を労災認定。背景を弁護士に聞く

ビジネス

 2021年2月26日、大手電機メーカー「ソニー」で働いていた45歳男性社員の突然死を、長時間労働が原因で起きた過労死として三田労働基準監督署が労災認定した。2018年1月に男性が亡くなってから、約3年の月日が流れていた。

弁護士

八王子合同法律事務所・白神優理子弁護士

 男性は、2015年からアラブ首長国連邦・ドバイに赴任。タイムカードがなかったため、「労災認定につなげるのは難しいのではないか」という声もあったという。そんななかで労災認定された決め手は何だったのか。遺族の代理人を務めた八王子合同法律事務所・白神優理子弁護士(@yuriko_shiragaに話を聞いた。

海外勤務で労働時間の記録がなかった

――今回の過労死問題、労災認定された決め手は何だったのでしょう?

白神優理子(以下、白神):厚生労働省のホームページには、労働災害として認定する基準が明記されていまして「精神疾患による自死」または「脳・心臓疾患による死亡」によって基準が分かれます。そして脳・心臓疾患が死因となった方は「発症前の2~6か月でひと月の時間外労働(残業)時間がおおむね80時間を超えること」が労災認定の基準になるんです。

 ただ今回、男性は海外勤務だったため、タイムカードによる労働時間の記録が残っていませんでした。

 そのため私たち(代理人弁護士)は、遺族の労災申請者となった男性の奥様と一緒に、LINEの履歴、会社用のスケジュール帳、男性が使用していたパソコンのログイン・ログアウトの記録、メールの送信時刻、パソコンに保存されていたファイルの更新時刻、自宅でパソコン作業をする男性の写真を含めた家族写真、元同僚の証言といった、証拠となり得るさまざまな資料を集めました。これらを証拠としてその日ごとの労働時間をまとめてしっかりと提出できたため、「おおむね月80時間の時間外労働」が証明されました。これが決め手だったと考えています。

――多くの資料を集めたんですね。ちなみに、他に労働時間を証明できるものはあるのでしょうか?

白神:活用されるケースが多いのは、ICカードなどを読み取らせる、出退勤の警備記録ですね。長期間保管されるメリットがあり、証拠としての活用におすすめです。たまに「もうドアが開いてるから、自分のカードはかざさなくていいや」と思う人がいますが、いざという時のために必ずかざしておくべきでしょう。

 また運転する業務の方は、アルコールチェックの記録が証拠になります。タクシーやバス、長距離トラックを運転される方は、必ず出勤時と退勤時にチェックをしますし、退勤するまではずっとお仕事されているはず。警備記録よりも保存期間が短いものの、とても有効です。さらに電車通勤の方は、乗降した時間が明記される交通系ICカードの記録が価値の大きな証拠になりますね。

陳述書提出に要した時間は2年間

ソニー

Sony company logo on headquarters building © Josefkubes | Dreamstime.com

――証拠となる資料集めから陳述書提出まで、どれくらいの時間がかかりましたか?

白神:男性の時間外労働がどれくらいだったのかを証明するためには、電磁的な記録をすべてドバイの時間から日本時間に直し、1日ごとに労働時間や残業時間を算出する必要がありました。これに時間を費やしましたね。2018年5月頃から立証に向けて準備を進めていたのですが、陳述書が完成・提出にいたったのは2020年5月頃。約2年かかっていますね。また、陳述書の量は90ページほどになりました。

――やはり労働時間の記録がないと、労災認定はされづらいのでしょうか?

白神:そうですね。脳・心臓疾患の場合はとりわけ、労働時間での認定に偏っているので、やっぱり明確な記録として残るタイムカードや電磁記録があったほうが、月の時間外労働や残業時間を証明しやすいですし、認定もされやすいでしょう。

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