幸楽苑vs日高屋、コロナ下で分かれた「人気中華チェーン」の明暗
難局を迎えるたびに、それを乗り越えたきたかのような会社があります。ラーメンチェーンの幸楽苑です。運営会社・幸楽苑ホールディングスの2021年2月の直営店全店の月次売上は、前年同月比で72.3%となりました。新型コロナウイルス感染拡大前の前年比で70%超えは驚異的。積年の宿敵(とも)日高屋は53.6%に留まっているのです。
新型コロナウイルス感染拡大前から、幸楽苑はずっと日高屋の背中を追い続けていましたが、コロナ禍でようやく花開こうとしています。今回は、これまでの幸楽苑と日高屋の戦略や財務状況を見比べ、その違いを比較してみましょう(数値は開示情報をもとにしています)。
ロードサイドと繁華街、対照的な両チェーン
幸楽苑は直営のラーメン店を全国で415店舗(2020年12月末時点)展開しています。国道などの幹線道路沿いに店舗を展開する、ロードサイドを得意としています。日高屋は437店舗(2020年11月末)。駅前や商店街などの繁華街への出店が中心です。この出店戦略の違いは、後々まで業績に大きく影響することとなります。
両社の差はコロナ前の業績(2019年度)を比較すると非常によくわかります。
幸楽苑の1店舗あたりの売上は年間7500万円、営業利益が900万円にとどまる一方、日高屋の売上は1.3倍の9700万円。営業利益も1.2倍の1100万円となっています。そのため、日高屋は店舗数が少なくても売上で幸楽苑に勝っているのです(幸楽苑のフランチャイズ加盟店の売上を加味しても日高屋が上回っています)。
“ちょい飲み”で客単価を上げた日高屋
繁華街型の日高屋は、道行く人々を店舗へと誘導することに成功していました。さらに策士家の日高屋はその立地特性をいかし、2017年からアルコール類を提供する“ちょい飲み”を開始します。
これによって客単価を上げることに成功したのです。日高屋の店舗数は2016年2月末時点で381店。2019年2月までで48店舗(13%)増加しています。実は日高屋の1店舗あたりの売上高は2016年2月期も2019年2月期もほとんど変わっていません。違いが出たのは、客数と客単価です。
ちょい飲みを始める前の2016年2月期は、通年の客数が前年比6%増加していました。客単価は1%の増加。ちょい飲みへと本格的に乗り出した2019年2月期は客数が0.4%減少しましたが、客単価は3.5%増加しました。ここがポイントです。飲食店は出店を重ねると客数が落ちる傾向があります。これには主に2つの理由があります。ブランドが陳腐化して一部の客が離れることと、同店舗同士で客の取り合いが発生するためです(これが顕著に出てしまったのが、いきなりステーキでした)。
客数がダメなら客単価だ。日高屋のちょい飲み戦略は巧妙を極めるといっていいものでした。しかもロードサイドを得意としていた競合の幸楽苑には、アルコールを積極的に出せないという弱点があったのです。