老舗出版社を買収した「まんが王国」運営代表に聞く、新たな展望
コロナ禍で外出ができなくなったことで、自宅で映画鑑賞や読書をする人が増えている。「電子書籍ビジネス調査報告書2020」(インプレス総合研究所)によれば、電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は3,750億円と、堅調に伸びている。
なかでも無料で漫画を読める漫画アプリ・サービス広告の市場規模は2019年度が210億円となり、翌2020年度は1.3倍の270億円程度への成長が見込まれている。
2006年から電子コミックサービス「まんが王国」を展開する株式会社ビーグリー。昨年秋に、漫画に強みを持つ出版社・ぶんか社グループの株式を取得。さらに2020年末にはユーザー課金額で過去最高課金額を達成するなど躍進を続けている。
電子コミックサービスの老舗ともいえる同社社長の吉田仁平氏に、その戦略や今のコンテンツビジネスに必要なことを聞いた。
ユーザー課金額過去最高課金額を達成
2020年度の1月〜12月期の決算で、第4四半期のユーザー課金額が過去最高課金額を達成した「まんが王国」。その理由について、吉田氏はこう話す。
「巣ごもりで利用が増えた影響もあると思いますが、それ以上に大きいのが、期中に投入した施策と戦略の成果だと考えています。我々のサイトは、ユーザーさんにポイントを購入していただき、それを使って漫画を読む仕組みですが、ポイント購入時・利用時ともにポイント還元を行う『お得感No.1 戦略』を昨年4月から実施しています。
また一時的なポイント還元の強化ではなく、常時このスタイルを採用することで、他社よりも安く漫画が読めるようにしました」
ユーザーが受け取ることのできるポイントが増える分、施策開始直後の課金額は少し下がったものの、その後はユーザーが定着していったそうだ。
「コンテンツプロデュースカンパニー」を目指す
2020年秋には、ぶんか社グループの株式を取得。両社は従来から協業しており、過去にヒット作を生み出している背景もあることが今回のM&Aにつながったという。
「2019年から21年の中期経営計画として、『コミック配信会社からコンテンツプロデュースカンパニーへ』という大戦略を打ち出しています。これは、電子コミック配信元としてまんが王国が継続成長していくことに加えて、コンテンツを自ら作ってユーザーさんに届けることにも注力していく施策です。そして、そのための漫画を作る機能の強化という観点から、ぶんか社グループの株式を取得させていただきました」
まんが王国単独でも、従来からオリジナル作品の制作を手がけており、すでに120作品以上をリリースしている。漫画に強い出版社であるぶんか社をグループに取り込むことで、コンテンツ数・編集人員ともに一気に強化をはかることができるという。