“検察庁法”廃案は「安倍政権による“ダンボール肉まん”である」<ダースレイダー>
東京大学中退という異色な経歴を持ちながら、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(43)。この連載では現代日本で起きている政治や社会の問題に斬り込む。
河井克行前法相・案里議員夫妻の逮捕、検察庁法改正案をめぐる検察人事への介入疑惑、さらに持続化給付金事業の再委託による中抜き疑惑と、コロナ禍でも次々と問題が浮上している安倍政権。
今回は、なかでも世論の反発が大きかった「検察庁法改正案」に焦点をあて、ダースレイダーがわかりやすく解説する。
コロナ禍が若者に与えた“いい影響”
ダースレイダー:コロナの流行によって、家にいる時間が長くなりました。テレワークをしたり、勉強したり、人によって過ごし方はさまざまですが、どうしても情報に触れる機会が増えたと思います。
ウイルスに関しては専門家がこう言ってるとか、他国ではこう対策をしているとか、ワクチンがどうとか、感染者の状況とか……日替わりで新しい情報が入ってきます。ネットやテレビなどでそういった情報を得るなかで、政治が何をやっているのか? なんで今自分たちがこんな状況に置かれているのか? とかを並行して見られるようになりました。
意図しなかったことですが、これってコロナ禍でのポジティブな動きになると思います。自分の生活基盤を気にしないで済むのは世の中がうまく回っている証拠です。ところが、今までの社会システムが、どうもうまく回っていないんじゃないか? 自分たちが何の上に乗っかって日常生活を送っていたのか? ということに、初めて気づいた若者も、今回、多かったのではないでしょうか。
日常生活が何を基盤として動いているものなのか、どういうふうに誰が設計しているのか、どこにどういったお金が使われるのか。普段通りの生活を送っていると、こういうことをなかなか考えません。
検察庁法改正案で起きた“Twitterデモ”
ダースレイダー:家から一歩でたら、地面がちゃんと舗装されているのか、電車は時間どおりに来るのか、会社に行ったら入れてもらえるのかとか、本当は心配してもいいようなことは数多くありますが、人間の脳は優先順位が低いことを考えなくなります。なぜなら仕事や娯楽に集中できるようになるから。
コロナでいろいろなことがストップしてしまったために、今まで動いていたものを点検する時間が増えた。これがわかりやすい形で現れたのが「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグと“Twitterデモ”。
普段、政治的な発言をしないと思われていたタレントや著名人が一斉に参加したことで「あの人が言っていたことって何なのだろう」と興味を持つ人が増えた。あるいはそういった動きに対して「知らないのにしゃべるな」「間違った情報を鵜呑みするな」というバックラッシュも同時に起きた。けど、多くの人がそういう事柄に気づけたという意味では、素晴らしい発端だったと思います。