「チャルメラ」「一平ちゃん」の明星食品が日清食品に買収されたワケ
「チャルメラ」や「一平ちゃん」「中華三昧」といった即席麺ブランドでお馴染み、明星食品の創業は1950年。
同社初の即席麺「明星味付ラーメン」の発売は1960年のことです。なお、業界の王者であり、現在は親会社でもある日清食品の「チキンラーメン」の発売は’58年となっています。
即席麺の販売開始こそ、日清食品に一歩遅れた明星食品でしたが、’62年には「シナチク入り明星ラーメン」を発売、これは現在の即席麺の標準型といえる「スープ別添」方式をいち早く採用したものでした。
この後も明星食品は、商品開発競争の激しい即席麺業界において、時代そのものを表現したような名作をたくさん生み出していますので、代表的なものを紹介しておきましょう。
一度は食べたことある!明星食品の名作たち
①. 「明星チャルメラ」(’66年)
現在でも、明星食品の看板商品である「明星チャルメラ」の発売は66年です。当時は以前の記事でも紹介したエースコックの名作「ワンタンメン」(63年)に代表される淡白系の即席麺が支持を集めていました。そんななか、夜の街に客寄せのチャルメラを吹きながら、屋台『当たり屋』を引くおじさんの出す、コクのある醤油味のラーメンは、顧客の心を見事に掴み大ヒット、明星食品はこのヒットにより当時の業界首位を奪取します。
②. 「中麺(ちゅんめん)」(’69年)
高度経済成長によって人々が豊かとなり、必ずしも満腹感ではなく、品質や健康面を気にするようになってきていた’69年、明星食品は業界に先駆けて、カロリー控えめのノンフライ麺「中麺」を投入、これ以降、業界にノンフライ麺ブームが巻き起こることとなります。
③. 「ミニラーメン ちびろく」(’74年)
74年に発売された「ミニラーメン ちびろく」は通常の袋麺よりかなり小型の麺が6個(麺2個で1人前)入っている商品で、当時流されていた、せんだみつおさんのCMも大人気でした。一方で、よく食べるお父さんには「ちび3」普通に食べたいお母さんには「ちび2」子供のおやつには「ちび1」といった、個人主体の食べ方を提案している商品でもあり、家族で同時に食卓を囲むことが少なくなっていく時代の流れも感じられます。
④. 「中華三昧」(’81年)
さらに時代は進んで、日本経済が安定成長からバブル経済へと入っていく80年代、またもや明星食品は即席麺業界において、台風の目となる高級麺路線「中華三昧」シリーズを投入します。広東、北京、四川をテーマにした「本格中華の拉麺」として、これまでの倍近い価格で発売された「中華三昧」は「そんな高い即席麺が売れるわけがない」という販売店の声も少なくない中、品切れが続出して生産が追いつかなくなるほどの、爆発的ヒットを記録します。
カップ焼きそばで人気爆発も、時代の荒波に
ところで、バブル経済が絶頂から一気に崩壊へと向かう前夜の’89年、即席麺業界には一足先に大きな転機が訪れます。
それは「カップヌードル」(’71年)の登場以来、成長を続けていたカップ麺が24億食に達し、ついに袋麺の22億食を追い抜いたことでした(なお、現在ではカップ麺が30億食強、袋麺が20億食弱となっています)。
にもかかわらず、袋麺において業界をリードするような画期的な看板商品を生み出してきた明星食品が、カップ麺においては不思議なほどに存在感を示せない流れが続いていました。
⑤「一平ちゃん」(’93年)「一平ちゃん 夜店の焼そば」(’95年)
そんな明星食品が、バブル崩壊後の93年にようやく生み出したカップ麺でのヒット作こそが、濃いめの味付けがクセになる「一平ちゃん」でした。
「一平ちゃん」は「冬場の一平ちゃん」「夏だぜ!一平ちゃん」「でかめの一平ちゃん」といったバリエーションを展開しつつ、ついに’95年にからしマヨネーズ付きの元祖ともいえるカップ焼そばの名作「一平ちゃん 夜店の焼そば」を開発販売。明星食品の新しい顔として現在では堂々たる看板商品となりました。
こうして「一平ちゃん」シリーズの誕生により、ようやくカップ麺においても反撃の兆しを見せた明星食品でしたが、そんな平成も半ばの2006年、商品開発競争以上の激しい争いに明星食品は巻き込まれていくことになります。それが米国投資ファンド、スティール・パートナーズ(以下スティール)による敵対的TOBでした。
6月8日の官報に掲載した第69期決算公告(’18年3月31日現在)によれば、売上高は488億9200万円(前年同期は481億6800万円)、経常利益は13億8400万円(前年同期は16億2700万円)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は123億5000万円(前年同期は120億7900万円)でした。
明星食品の過去の業績や企業情報は「NOKIZAL」で確認できます。