ふるさと納税の仕組みを徹底解説。高還元率トップ5も
2008年にスタートし、昨今は法改正などをめぐって注目を集めている「ふるさと納税制度」。
「地方自治体に寄付をすると、その金額に応じて地域の名産品・特産物などがもらえる」という制度ですが、いまいち何がお得なのかピンときていない人も多いのではないでしょうか。
今回はふるさと納税の仕組み、お得に利用するコツや、還元率の高い返礼品がもらえる自治体を「ふるさと納税ナビ」編集長、内田綾子氏が解説します。
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・ふるさと納税の仕組みを解説
・ふるさと納税の使い方。ワンストップ特例とは?
・ふるさと納税の返礼品「高コスパ返礼品」ランキング
・ふるさと納税後に引っ越しをしたら
・iDeCoとの合わせ技もおすすめ
目次
ふるさと納税の仕組みを解説
ふるさと納税とは、シンプルに言うと「自治体へ寄付をすること」。ふるさと納税を行っている自治体であれば日本全国どこでも寄付することができます(現在住んでいる自治体への寄付はできない場合もあります)。
寄付はPCやスマホから返礼品選び、支払いまで簡単に行うことができ、その手軽さから寄付者は年々増加しています。ではふるさと納税はなぜお得なのでしょうか? その仕組みと、どのくらいお得になるのかをご紹介します。
(1)返礼品には高級食品も
自治体が寄付のお礼として用意しているのが「返礼品」です。各自治体は特産品や商品券などを競うようにして提供しています。
なかには黒毛和牛、高級うなぎ、特Aランクのお米、シャインマスカットなどの高級食品や、温泉の宿泊券なども多く含まれています。これらをもらうには、実質2000円以外のお金は一切かかりません。送料もゼロなのです。
(2)2000円で高級品がもらえるワケ
なぜ、たったの2000円で返礼品がもらえるのでしょうか。ふるさと納税では、必要な手続きをすると、上限はありますが寄付金額から2000円を引いた残りの額すべてが、翌年の住民税などの税金から控除されるのです。
つまり、ふるさと納税は、寄付する→返礼品が届く→手続きする→翌年の税金が安くなるという仕組みになっています。2000円で高級ブランド牛などがもらえるのですから、お得ですよね。
(3)寄付金の上限額は人それぞれ
自己負担が2000円となる寄付の上限額は、個人の家族構成と年収で変わります。子持ちよりも夫婦、夫婦よりも独身、また年収が高いほど寄付上限額は高くなります。
具体的な寄付の上限額が知りたい方は、ふるさと納税サイトなどの「控除上限額シミュレーション」で簡単に算出することができるので、一度試してみてください。
例えば、年収300万円で独身であれば、2万7000円までの寄付が可能となります。調べてみると、1万円の寄付でもA5ランクの佐賀牛400gや稚内産紅ズワイガニ500g、上限ギリギリの2万7000円の寄付では山梨県の神の湯温泉が満喫できるペア宿泊チケットがもらえるようです(2019年12月5日時点)。
【もっと詳しく知りたい】⇒「ふるさと納税」であなたが得する金額は?今すぐチェックできる
ふるさと納税の使い方。ワンストップ特例とは?
ふるさと納税の主なメリットは、「地域特産の返礼品を充実したカタログから選べること」と「税額控除を受けられること」。
ここではふるさと納税の具体的な流れや、煩わしい手続きが苦手な人向けに、便利な制度を解説します。
(1)ふるさと納税の流れ
好きな返礼品のある自治体に寄付をして、寄付の証明書と返礼品を受け取る。確定申告または「ワンストップ特例」の手続きをする(解説は後述)。これでOKです。
寄付をする方法は、ふるさと納税のポータルサイトにアクセスして、そこでの手順に従うというのが便利です。
サイトで寄付をすると、「寄付金受領証明書」と「ふるさと納税ワンストップ特例制度」に関する書類が届きます。「寄付金受領証明書」は確定申告に必要で、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」に関する書類はワンストップ特例を利用する際に必要です。
(2)「ワンストップ特例」とは
ワンストップ特例制度とは、会社員など確定申告のやり方が分からない人でも税額控除を簡単に受けられる制度です。
ふるさと納税以外に申告するものがない場合に限り利用できるこの制度。手続きは、寄付した後に届く「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」に記入して、ポストに入れるだけで完了します。
ワンストップ特例を使える自治体数には上限があり、それ以上利用する場合は、確定申告をしなくてはなりません。また、申請には期限もあるので注意しましょう。
(3)ふるさと納税の税額控除のされ方
税額控除のされ方は確定申告の場合と、ワンストップ特例の場合で異なります。どちらを選んでも、全体的な還付・控除額に差はありません。
確定申告の場合、所得税と住民税が控除されます。5万円寄付した場合、4万8000円が一定の割合で所得税と住民税に割り振られ控除されます。所得税の分はその年に還付という形で控除されます。一方、住民税の分は翌年の住民税が減額されるという形で控除されます。
一方、ワンストップ特例の場合、住民税のみが控除されます。5万円寄付した場合、4万8000円すべてが住民税に割り振られ控除されます。この住民税は翌年度の住民税から減額されます。
【もっと詳しく知りたい】⇒ふるさと納税、いつまで間に合う?どの程度お得になるか
ふるさと納税の返礼品「高コスパ」ランキング
2019年6月より、総務省はふるさと納税に関する新たな法規制を実施しています。改正法では「返礼品の価値は寄付金額の3割以下」「返礼品は地場産品に限る」との基準を満たさない自治体について、ふるさと納税制度から除外できるとしました。
しかし、ふるさと納税の情報サイトの中には、ネット等で市場価格を独自調査して、80~90%もの高還元率を表示しているところがあります。一方で、高還元率で知られる福岡県那珂川市の財政課を日刊SPA!が取材したところ、「計算の根拠がわからない。30%は厳守している」という返答でした。
そこで今回はあくまで目安として、「ふるさと納税ナビ」編集長・内田綾子氏が、独自調査による「返礼品の還元率ランキング」上位5品を紹介します。
5位:国産牛100%ハンバーグ
(山形県河北町)
老舗牛肉卸問屋の国産牛100%ハンバーグ。ふるさと納税返礼品、製造累計10万個を超えているとか。大根おろしにポン酢が一番美味しく食べられるそうですが、そのままでも十分美味しいそうですよ。
寄付金額:1.1万円
内容量:約2.25kg(約150g×15個)
4位:佐賀牛A5しゃぶしゃぶ・すき焼き用
(佐賀県嬉野市)
佐賀牛の「しゃぶしゃぶ・すき焼き用」です。佐賀牛のなかでも最高格付け評価を受けたA5ランクの厳選部位を、長年佐賀牛を扱ってきた職人が見極めているとか。
寄付金額:1万円
内容量:厳選部位(ロース肉・モモ肉・ウデ肉)400g
3位:村上牛 肩ロース
(新潟県村上市)
新潟を代表するブランド牛・村上牛。新潟県村上市、関川村、胎内市で飼育された、格付等級A-4・B-4以上のものを村上牛と呼ぶとか。肩ロースはすき焼きにしてもよし、しゃぶしゃぶにしてもよし。
寄付金額:1万円
内容量:肩ロース300g
2位:土佐文旦(ぶんたん)
(高知県土佐市)
2位にランクインしたのは、はっさくや夏みかんの親品種である「土佐文旦」。
すっきりとした甘みの中に程よい酸味とほろ苦さのある、爽やかな風味を思う存分に堪能してみては。
寄付金額:1万円
内容量:大玉2L~4Lサイズ約7kg(約12~15玉)
1位:辛子明太子1kg
(福岡県那珂川市)
福岡名物といえば、明太子。暖かいご飯にのせる、お酒のおつまみに、明太パスタや明太チャーハンに……と用途はさまざまです。独自の調味液に低温でじっくりと漬け込み、さらに二段仕込で熟成させています。
寄付金額:1万円
内容:辛子明太子切れ子(無着色・二段仕込)1kg(500g×2)
【もっと詳しく知りたい】⇒ふるさと納税「高コスパ返礼品」ベスト12。牛肉にマンゴー、どう見てもお得…
ふるさと納税後に引っ越しをしたら
これらの返礼品を確実に受け取るためにも、届け先の住所は間違いがないようにしましょう。しかし、申し込み後に引っ越しが決まり、住所が変わってしまうケースもあるでしょう。
住所変更の手続きをしないと、いったいどうなるのでしょうか?
(1)住所変更の手続きが必要なケース
そもそも住民税の課税は、毎年1月1日時点で住民票のある住所で課税されます。そして税金額を決定する確定申告は、その翌月である2月。つまり、ふるさと納税を行ったときには、翌年1月1日の所在住所で課税され、その翌月から確定申告の手続きを行うわけです。
2019年10月5日にふるさと納税を行ったケースを例にすると……。
・2019年11月10日に引っ越しをした場合
⇒ふるさと納税後に迎える2020年1月1日時点は新住所となるため、手続きが必要
・2020年1月10日に引っ越しをした場合
⇒ふるさと納税後に迎える2020年1月1日時点は旧住所となるため手続きは不要
このように、引っ越し日が翌年の1月1日をまたぐかどうかによって異なります。また、ワンストップ特例制度を利用しているかどうかによっても手続きが異なります。
(2)ワンストップ特例制度を利用している場合
以下の2つの条件に当てはまる場合はワンストップ特例制度が使用できます。
・5つの自治体までの寄付
・住民税のみの税額控除
・確定申告義務がない
ワンストップ特例制度を利用して寄付した後、引っ越しによる住所変更があった場合には、自治体への届出が必要となります。
届出は「寄付金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書」を記入して、ふるさと納税を行なった翌年の1月10日までに提出するだけ。用紙はふるさと納税の各ポータルサイト、自治体のホームページなどに用意されています。
(3)確定申告をする場合
確定申告時に自分でふるさと納税の申告も行う場合は、とくに住所変更の手続きは必要ありません。
確定申告の書類に新しい住所と、ふるさと納税の内容を記載すれば、それで新住所での課税と控除を行ってくれます。
(4)住所変更の手続きをしないままだとどうなる?
自治体側で引っ越し先の住所を把握することができません。そのため、ワンストップ特例申請書も手元に届かなくなってしまいます。
また、個人情報の紐づけを行うことができず、控除対象の金額が宙に浮いてしまいます。寄付金による住民税控除が受けられなくなってしまい、予定よりも高い金額が課税されてしまうケースも。
【もっと詳しく知りたい】⇒ふるさと納税後に引っ越し。住所変更を届けないと…どうなる?
iDeCoとの合わせ技もおすすめ
老後の年金が問題視されている昨今ですが、一方では様々な形の年金が利用できるようにもなってきました。
その中でもiDeCo(個人型確定拠出年金)と呼ばれるものが注目を浴びています。iDeCoは単体でも税額控除の特典がありますが、ふるさと納税との合わせ技を使うことで、さらなる節税効果を期待できます。
(1)iDeCoとは何か
加入者自らが掛金を拠出し、資産を運用する「確定拠出年金」。iDeCoはその「個人型」にあたります。国民年金を払っている希望者が加入できる新しい年金で、積立金は加入者個人の裁量と責任で運用商品を選べ、60歳になると受け取れるようになります。
年金といっても実質は「積立投資」ですので損をする場合もありますが、以下の3つの節税効果はしっかりと受けることができます。
・iDeCoの積立金は所得税や住民税の税計算の際に控除(税額から還付や減額によって差し引かれる)の対象になる
・投資信託などの金融商品で運用する場合、通常なら運用益に対して20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかるが、すべて非課税となる
・60歳で年金を受け取る時には、年金か一時金で受け取るが、年金で受け取る場合は「公的年金控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用される
(2)ふるさと納税とiDeCoに加入するときの注意点
ふるさと納税は税額が控除された上に返礼品をもらうことによって実質的な節税効果がありますが、iDeCoと一緒に利用する時には、少し注意点があります。
ふるさと納税には「寄付限度額」があって、それによって返礼品の選択肢の幅が決まってきます。その限度額を決めるのが、利用者の納めている所得税と住民税なのです。
iDeCoを利用し、住民税や所得税が控除されると、ふるさと納税の寄付限度額が下がり、選べる自治体や返礼品の選択肢が狭まる可能性があるのです。
(3)ふるさと納税とiDeCo おすすめの利用法は?
ふるさと納税は返礼品によって実質的に得をしますが、iDeCoは積立金、運用益、受け取り時の税額控除があるため、ふるさと納税よりも大きな得をする可能性が高いです。
つまり、可能な範囲でできるだけ多くiDeCoで積み立てをして、残りの額から上限までふるさと納税をするのが良いでしょう。
【もっと詳しく知りたい】⇒ふるさと納税よりお得?節税できる年金制度、iDeCoとは
<TEXT/内田綾子(「ふるさと納税ナビ」編集長)>