「団地ブーム」で若者も住みたがる現在。団地の魅力を専門家に聞いた
近年、若年層やファミリー層を中心に団地が再注目されている。一時期は「画一的」や「時代遅れ」などの声もあったが、なぜ、今の時代に団地が人気なのだろうか。そして、若者が団地に住みたくなる魅力とはどのようなものか。
bizSPA!取材班はこの疑問を解消すべく、『日本懐かし団地大全』(辰巳出版)の著者であり、全国各地の団地をまとめたウェブサイト「公団ウォーカー」を手掛ける、照井啓太さんに話を聞いた。
15年間で全国300か所の団地を訪問
――さっそくですが、団地に興味を持ったきっかけを教えてください。
照井啓太(以下、照井):最初に興味を持ったのは今から15年ほど前、高校2年生の頃です。私はもともと団地で生まれ育ったのですが、通学路にあるスターハウス(星の形をした団地の名称)に興味を惹かれて。私が住んでいた団地にもあったのですが、まさか他にもあるとは思わなかったので驚いたんです。この頃からスナップ写真を取るようになり、段々とハマっていきました。
――今までで、いくつくらいの団地を回られたんですか。
照井:しっかりと数えたことはないんですけど……。300か所は回りました。
日本の暮らしを変える「一大プロジェクト」
――団地というと高度経済成長のイメージがあります。はじめて団地が生まれたのはいつ頃になるんでしょうか。
照井:団地が生まれたのは高度経済成長が始まって間もない、昭和31年(1956年)頃にさかのぼります。まだ東京オリンピックも開催されてないし、新幹線も通ってなかった時代です。この頃は戦後の住宅の混乱が続いていて、戦前の兵舎を応急的に改造した家とか、バラックのような家がたくさん残っていました。明日を過ごすためにどうするか」。そんな生活が溢れていた時代に、“日本の新しい住まい方”を示すためにできたのが団地なんです。
――人々の生活水準を高めるために、団地がつくられたんですね。
照井:そういう背景もあり、当時の団地には一流の建築家や技術者が携わっていました。実際に物件を見ると、「こういう地域だからどう配置したほうが良い、こうしたら快適になる」といった職員の想いが溢れていて、哲学を持って作られているのを感じます。決して適当には作っていないんです。