「1社目にいい会社に入らなくても大丈夫」ニューエリートの働き方<北野唯我×尾原和啓:対談>
ここ数年、空前の売り手市場にあるなかで、転職をカジュアルに検討する20代のニューエリートが増えている。
IT業界を中心に新たな産業が生まれ、転職市場で注目を浴びる一流企業も入れ替わってきた。国内では経営危機が報じられたシャープや東芝、JAL、海外に目を転じれば成長著しいアップルやグーグル、アマゾンなど企業のサイクルは早まってきている。
一度でも「一流企業に入ればエリートの仲間入り」という考えはもう古い。今回、世界中を飛び回るITエバンジェリストの尾原和啓氏にタブレット画面から参加していただき、話題沸騰中のビジネス書『転職の思考法』の著者、北野唯我氏とともに新エリート像について語ってもらった。
新時代の「ニューエリート論」を語る
尾原和啓(以下、尾原):今はバリ島でして、ロボの画面から失礼します(笑)。
北野唯我(以下、北野):新時代っぽくていいですね。
尾原:さて、今の時代のエリートですが、僕は「エリート」には2パターンあると考えています。一つは進学校から一流大学に行って一流企業に入る“肩書エリート”。もう一つが10代から自分でブログやSNSで発信し続けて、早くから居場所をつくっていく“アウトプットエリート”。後者は現代版エリートといえるでしょう。
北野:エリートって何かというと“影響力の最大化”だと思うんです。旧来型エリートは大企業や官僚など会社としての影響力を強く持っていましたが、現代では個人で発信して信用を積み重ね、会社ではなく個人としての影響力を持っている人が新時代のエリートだと思いますね。
尾原:企業に属するというわけではなく、個人が大切ってことですね。そういう意味で、これからマーケットが大きくなっていく“始まりの場所”にいることが大事。最近の若い人の話を聞いていると、1社目でキャリアを成功させようとは思っていない人も増えています。
近年の就職人気企業ランキングで、広告代理店が下がって商社が上がってきているのが象徴的で、「グローバルで戦いたい」「ネットワークを得たい」「最前線でサバイブできる胆力が欲しい」と考えている。1社目を目的ではなく、自分に必要なアビリティを得るための手段としてファーストキャリアを考えていますね。
20代と40代で、仕事観はどう違う
北野:尾原さんから見て、20代と40代の仕事観の違いは感じますか。
尾原:僕は「37歳」に価値観の断絶があると思っているんです。それって、生まれたときに“ないものがある40代”と、“ないものがない20代”という構図で、上の世代は会社において足りないものが多いため、それを埋める作業に集中できたんです。一方で若い世代には、隙間がもうない。
北野:それ、すごくわかります。今の若い人たちは「消費」より「生産」にお金を使う意識があるんですよね。NIKEがすごく好きな同世代の知人は「100万円のNIKEの靴を買うより、100万円を払ってもいいからNIKEの靴のデザインをしたい」と言っていたんです。
消費することより、参加できる“余白”に対して自分が生産できるほうが面白いと感じるのが、今の若い人の価値観。それって、お金を払ってでも仕事をするオンラインサロンが流行していることにも重なりますよね。