マルコメ「全員が賛成する商品」を狙わないヒットの法則
日本人にとって欠かせない調味料のひとつが味噌です。味噌メーカーの老舗にして日本を代表するブランド「マルコメ」。
業界内でもいち早くダシ入りの味噌や、ペットボトルに入った液体味噌を発売するなど、それまでの慣習に囚われない商品を次々に発売しています。
2月21日放送の『カンブリア宮殿』(テレビ東京)で紹介された、斬新な新商品を作り出す秘密が話題を呼んでいます。
「全員が賛成する商品ではうまくいかない」
マルコメの創業は安政元年、1854年にさかのぼります。1847年、長野県で起きた大地震(善光寺地震)の際に、蔵に残っていた味噌を大勢の人に分け与えたことが創業のきっかけとされています。
地方にある味噌メーカーであったマルコメが、現在のような日本を代表する味噌メーカーになったのは「だし入り味噌・料亭の味」というダシ入りの味噌の発明です。
きっかけとなったのは、消費者からの「マルコメの味噌で味噌汁を作ったけれど美味しくなかった」というクレームの手紙。電話で詳しく話を聞いたところ、消費者は「ダシを取らずに、お湯で味噌を溶いていた」と回答。
その話を聞いた、青木佐太郎社長(当時)は、ダシの入った味噌を作ろうと思いつきます。しかし、当時の感覚では“味噌にダシを入れるのはタブー”という常識があり、「一流の味噌メーカーがすることではない」と社内会議でも猛反対を受けます。
しかし、青木社長は「反対が多いなら、これはやるべきだ。全員が賛成するような商品ではむしろ、うまくいかない」と意気込んで、1981年、ダシ入り味噌の開発を決断。その結果、1982年、他社にさきがけてダシ入り味噌「料亭の味(だしいり)」を発売し、空前のヒットとなりました。
現社長が語る、お客様の求めているものは何か
現社長の青木時男氏もまた、ダシ入り味噌の発売を決める社内会議に立ち会っていました。番組の取材に「多くの賛成意見が出てしまう商品は、陳腐化されたアイディアが多く、常識の範囲を出るようなものではないと先代の社長は考えていた」と、説明します。
味噌メーカーでは「自分の作るものこそが最高の商品だ」というプロダクトアウト型の生産・開発が主流。そのような業界の風潮下で、マルコメは消費者のニーズを優先する「マーケットイン型」の商品開発をしてきたそうです。
青木時男現社長は「作り手の条件とか、課題があって、できない理由は100個も出てくる。でも、それは“お客様にとって本当に求めていることなのか”ということとの格闘です」と番組の中で語ります。
マルコメは、次の一手として、ペットボトルに入ったペースト状の味噌「液みそ」を2009年に発売。これも、消費者の「味噌が溶けにくい」「ベタベタで使いづらい」という従来の味噌への不満から開発されたものです。現在では、ハラール認証を受けた味噌、冷蔵不要の粉状の味噌など消費者のニーズに合った商品が発売しています。