厚労省“ブラック企業リスト”とは?実名公表447社でも効果のほどは…
安倍政権が掲げる「働き方改革」。それらの取り組みの成果を実感できている人は一体どれくらいいるものなのでしょうか?
厚生労働省労働基準局監督課は、長時間労働削減に向けた取り組みの一環として、2017年5月10日から「労働基準関係法令違反に係る公表事案」(いわゆる”ブラック企業リスト”)として法令に違反した企業名をリストにして公開しています。
リストは毎月更新されており、今回10月31日には74社が追加されました。現在の掲載企業は計447社にものぼっています。
そのリストのなかから、とくに注目すべき事案をピックアップして取り上げます。
誰もが知っている大手企業の法令違反もリスト入り
このサイトで公表されている事案の基準は以下の2つです。
労働基準関係法令違反の疑いで送検された事案と、「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」に基づき、局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨を公表した事案です。
公表から約1年の間、掲載されることとなっており、誰もが知っている大手企業も掲載されていました。
重大な注目すべき事案についてご紹介していきます。
保護具なしで危険な作業に従事「王子製紙」
2017年7月に「王子製紙株式会社 春日井工場」に勤務していた労働者2人が、アンモニア水を浴びて死傷した事件が発生しました。
アンモニアは毒性が非常に高く、皮膚に触れてしまうとアルカリ腐食により細胞タンパクの変性凍傷になってしまうなど、危険な薬品です。
しかし、同社はアンモニア水を貯蔵する設備の検査作業をする際に、保護衣、呼吸用保護具などを着用させずに作業をさせていました。そのことが、労働安全衛生法第22条、特定化学物質障害予防規則第22条違反したため、公表されました。
工場での仕事は、危険と隣合わせの作業も少なくないですが、安全対策を徹底していれば防げた事故といえるでしょう。
公営企業も例外ではない「山陽小野田市水道局」
公営企業であっても、法令違反があればリスト入りを免れることはありません。
2018年5月、山口県宇部市にある「山陽小野田市水道局 高天原浄水場」は、沈澱池の点検巡視作業を手すりの設置などの転落防止措置を講じることなく労働者に行わせたとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第533条に違反したと公表されました。
当時の状況によると、定期再任用の現業労働者は、川から流れてきた水を溜めておく沈殿池を巡視する点検作業を行っている際、柵や手すりのない部分から転落し死亡してしまったとのことです。
法律を最も遵守しなければならない公営企業であっても、このような事故が起きてしまうのは驚きです。