“和菓子の危機”に活路を。タイで挑戦する老舗和菓子店、人気の理由は「映え意識」
5代目社長の夢「和菓子を世界へ」
明治4年創業の巌邑堂は、150年以上に渡り、先代が培った伝統の味を脈々と受け継いできた。上質な正統派和菓子は地元浜松を中心に広く愛されている。
現在の5代目社長・内田弘守さんは「海外に和菓子の魅力を広めよう」と志し、ニューヨークやパリ、シンガポールでもPRを行ってきた。タイへの本格進出で大抜擢されたのが、高谷さんだった。
高谷さんが内田社長に出会ったのは、大学生のとき。巌邑堂の本店併設のカフェでアルバイトをしていた際、社長の人間性に惚れ込んだ。
「内田社長は磁石みたいに周囲を惹きつける人で、かっこいい大人だなぁとしびれました。いつかこの人のもとで働きたいと、ずっと思っていたんです」
社長の一言「タイ事業を任せる」
高谷さんは大学卒業後、オーストラリアやドバイ、ボリビアで観光関連の仕事に従事し、豊富な海外経験を積む。そして2015年、帰国のタイミングで内田社長に「働かせてください」と連絡し、海外要員として巌邑堂に入社した。
「社長から『タイ事業を君に任せる』と話があり驚きました。そこから3年は和菓子作りの修行に励みつつ、定期的にタイ出張をして現地の材料を持ち帰り、研究を重ねました」
2018年11月、サイアム高島屋店のオープンと同時に、当時30歳の高谷さんは単身でタイに渡った。