売上高2兆円!三菱、住友を遥かにしのぐ「大手化学メーカー」の“稼ぐ力”
日本の大手化学メーカー信越化学工業株式会社が、2023年1月26日に連結業績予想の上方修正を発表しました。営業利益は従来予想を5.9%上回る9950億円、純利益も4.1%増の7080億円に修正しました。
信越化学工業は2022年10月27日にも上方修正を発表していました。今期2度目の上方修正です。信越化学工業は化学メーカーの中でも稼ぐ力が突出しています。なぜ、これほど業績が好調なのでしょうか?
化学メーカーとして異例の営業利益率
信越化学工業の営業利益率は32.6%。他の大手化学メーカーと比較をすると、その“異常”な高さに驚きます。売上高トップの三菱ケミカルグループが7.6%、住友化学が7.8%。競合メーカーは10%を超えることができません。
信越化学工業の売上高はしばらく1兆円台中盤で横ばいが続いていましたが、2022年3月期に前期比38.6%増となる2兆744億円に急伸。さらに2023年3月期は同34.0%増の2兆7800億円を予想しています。凄まじいスピードで加速を始めました。
売上高が予想通りに着地をすると、旭化成を抜いて業界2位の住友化学(2023年3月期の売上予想は2兆9900億円)に肉薄します。ここまで利益率が高く、売上高が好調な主要因に、事業の徹底的な選択と集中を進めたことがあります。
2つの「シェア世界1位」を持つ
信越化学工業は、塩化ビニル樹脂の生活環境基盤材料と、半導体シリコンの電子材料が売上高のおよそ8割を占めています。塩化ビニル樹脂、半導体シリコンともにシェア世界1位の会社です。他の化学メーカーとの1番の違いはここでしょう。
例えば、三菱ケミカルや住友化学、旭化成はハイリスク・ハイリターンの医薬品事業を持っています。化学メーカーが扱う素材は検査薬などの医薬品に転用できるものが多く、各社が研究開発を進めています。
開発には多額の研究費用がかかり、赤字になることも少なくありません。事実、三菱ケミカルは2022年3月期にヘルスケアセグメントで70億円の事業損失を計上しています。