上場企業に潜む経営リスク…「老舗ベンチャーキャピタル」の泥沼対決が示唆するもの
自己資本が厚すぎることで…
投資家が注目する指標にROE(自己資本利益率)があります。ジャフコは2022年3月期のROEが7.6%でした。ROEは8%を超えることが望ましいと言われています。ジャフコは企業価値を高めるプロ集団にもかかわらず、最低ラインに達していません。
ROEは純利益を自己資本で除して求めます。ジャフコは自己資本に厚みがありすぎて、ROEが高まりづらいのです。
2021年1月に野村総合研究所の株式の一部を売却。その資金350億円で自社株買いを実施しました。その際、ジャフコの株価はTOPIXを大きく上回るパフォーマンスを発揮しました。野村総合研究所の株式を売却、自社株買いを行うと株価が押し上げられることは証明済みだったのです。
旧村上ファンドは影響力を持ち続ける
最終的にジャフコは旧村上ファンドの提案を受け入れ、野村総合研究所の株式すべてを売却。2023年1月25日まで420億円を原資とする自社株買いを決めました。
また、配当方針も変更。2023年3月期末の配当を従来の100円から150円へと大幅に増額修正しました。中期的には2000億円近い純資産を1200億円程度まで圧縮し、ROE経営を実践するとの目標も立てました。
アクティビストは剰余金をため込む企業を見つけ出し、自社株買いを要求して株価上昇を狙います。投資を惜しむ上場企業の保守的なスタイルは、むしろアクティビストに狙われる経営リスクへと変貌を遂げました。ジャフコの1件はそれを如実に物語っています。
旧村上ファンドはジャフコの自社株買いに応じ、およそ960万株を売却しましたが、持株全てではありません。実は420万株超(5.83%)を残しています。村上側は追加の取得をする意向はないとしていますが、継続的にジャフコの動向を監視するのは間違いないでしょう。