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海外と逆行する「マイナンバー制度」の謎。情報漏洩のリスクをどう捉えるか

ビジネス

一本化でプライバシーが守られない?

 次にマイナンバーカードと保険証の一本化されることのリスクについても、出口氏に尋ねてみた。

「厚生労働省は『正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる』とアピールしていますが、患者が同意すれば過去の薬剤情報などが医療機関に提供されることを意味します

 一見便利そうですが、患者は医療機関の受付時、なぜ同意する必要があるのか?という説明を受けず、“3年間分の薬剤情報の閲覧”、“特定健診等情報”などの閲覧に対する同意を求められる可能性があります。同意するかどうかは選べますが、情報を閲覧する範囲は選べません。

 例えば、眼科でドライアイの治療を受ける際、2年前に精神科でうつ病の治療薬を処方された記録のようなプライベートな情報が医療機関に提供されることになります。患者側で提供できる薬剤情報の範囲を選べないため、周囲に伏せている個人情報を知られる恐れがあるのです

医療の自己負担が増えるかも

病院

 プライバシーに関するリスクだけに留まらず、資産情報が紐づけられて起こる懸念もあるようだ。

「財務省が所管する財政制度等審議会・財政制度分科会が出した『財政健全化計画等に関する建議』(平成27年6月1日)には、“マイナンバーを活用して、フローの所得だけでなく、預貯金等の金融ストックも勘案して、70歳以上においても医療の自己負担が3割となる『現役並み所得』などの負担能力を判定する仕組みに変えていく必要がある”と記されています。

 つまり保険証との一体化を進め、さらに預貯金などの資産情報もマイナンバーと紐付けて、資産のある70歳以上に対して自己負担割合を現役世代並みにする計画があることが伺えます

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