誤振込されたお金は返さなくてよい?山口阿武町「4630万円返還拒否」騒動を弁護士に聞く/2022年上半期BEST10
2022年上半期(1月~6月)、「bizSPA!フレッシュ」で反響の大きかった記事ベスト10を発表します。ポータルサイトやSNSでも大反響だった記事はこちら!(初公開日 2022年5月3日・情報は掲載当時のものです)。
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2022年4月8日、山口県阿武町で理解に苦しむ出来事が起こった。役場職員が誤って出力した振込依頼書を銀行に渡したことで、1世帯だけに463世帯分の新型コロナウイルス対策の給付金4630万円が振り込まれてしまったのだ。4630万円を受け取った世帯主は、役場から返金を求められたが応じず、「金は別口座に動かし、元に戻せない。罪は償う」と拒否。
4月22日阿武町の花田憲彦町長は改めて記者会見を開き、「痛恨の極みで、心からお詫び申し上げる。なんとか公金を取り戻せるように最善の努力を続ける」と述べた。しかし、4月27日に行われた町議会会員協議会後、末若憲二議長は「現時点で議会として、うつ手が見つからない」と諦めムードだった。
これに対して本当にうつ手がないのか、「プロスペクト法律事務所」代表の坂口靖弁護士(@yassiyassiyassi)に聞いてみた。
不当利得返還請求権が生じるが…
誤送金を受け取った世帯主は「返したくない」と答えているのだが、そのお金は我々の血税だ。この信じられない世帯主の行為に対して、法的処置は取れるのだろうか。
坂口弁護士は「理由のないお金が世帯主に振り込まれているので、法律的には“不当利得返還請求”という権利が生じます。誤振込を受けた人は、当然お金を返さないといけない義務を負います」とし、「ただ結局、ない袖は振れないといいますか、お金がない人から取りようがないので難しいかもしれません」と言う。
世帯主が得しただけなのか
お金を使ってしまった世帯主が、ただ得しただけになってしまうのか。そんなことがあれば国民も黙っていないだろう。
「そうですね。金銭的には得することになると思うのですが、法律的な支払い義務はなくなるわけではありません。この人が働いていて金銭を得ることがあれば、お金を差し押えて強制的に取り立てることはできる可能性があります。ですので、簡単に逃げ切れる話ではないと思います」
逃げられないように世帯主の名前を掲載すれば……と思うのだが、これについては逆に訴えられるリスクもあるという。
「名前が出るかどうかはマスコミの人の努力もありますが、今回の件は刑事事件化しておらず、民事上の話なので、個人情報の観点からして役場側もまだ名前も出していないです。警察が捜査して逮捕したら名前を公表すると思うのですが、現状では役場側はリスクを考えて『この人です』と言わないでしょう」