酔った社長の息子に襲われて…「辞める前に意思を示したい」27歳女性の訴えは届くのか
社会問題としてあまた報じられつつも、なかなか被害が減らない「性犯罪」。今回は職場で、上司から性犯罪を受けながらも、抗議がなかなかできずに泣き寝入りをしつつある女性を取り上げたい。人権や名誉を踏みにじられ、屈辱的な扱いの被害者ではあるが、加害者である上司は役員であり、社長の息子。社内では、圧倒的に強い立場だ。
実際に起きた事例をもとに、職場における性暴力を考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で弁護士による解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したことをあらかじめ断っておきたい。
泊りがけの懇親会で起こった事件
社員数70人の不動産会社の総務課(4人)に勤務する津田さやか(仮名・27歳)は今、退職を考えている。今年夏の全社員参加の泊りがけの懇親会での出来事が心の傷となり、このまま残ることが耐えられないからだ。
1泊2日の懇親会の初日の夜12時過ぎ、社長の息子である役員(34歳)から何度も部屋に1人で来るように誘われた。前々から、その役員が自分に好意を持っていることは周囲から聞かされていた。
津田は懇親会の初日、やむを得ず、宿泊先のホテルの1階のバーで深夜12時半過ぎから1時間ほど、役員とお酒を飲んだ。その場には、2人しかいない。役員はバーを出た後、肩に手をまわしてきた。明らかに酔っていた。誰もいないエレベーターでは、いきなり抱きしめられ、背中やお尻を触られた。必死に抵抗したが、怖くて声が出ない。胸もつかまれた。
ドアが開いた瞬間に、自分の部屋に逃げ込んだ。役員はしばらく、部屋の前にいた後、姿を消した。その日以降、週に数回は声をかけられる。津田はやんわりと断るが、拒絶はしていない。次の就職先があるわけではないからだ。拒絶ができない自分が情けなくなる。もう辞めたい。だが、辞めるならばせめて役員に何らかの意思を示したい、と思っている。
女性の権利にかかわる弁護士に聞く
離婚や性暴力、性犯罪などの女性問題や解雇や退職強要など労働問題で活躍する弁護士の相原わかばさん(弁護士法人女性協同法律事務所)に取材を試みた。
同事務所は、女性弁護士だけが所属する法律事務所としては日本最大級。全国で初めての「セクハラ」を争点とした訴訟と評される福岡セクシュアル・ハラスメント訴訟をはじめ、セクシュアル・ハラスメント、DVを含めた離婚、性暴力、ストーカー、労働問題など女性の権利にかかわる問題に取り組む。