ワクチン接種後に発症する人も

　長い間、精神的ストレスで起きると考えられていたが、数十年前からストレスはきっかけのひとつであり、それ以外の誘引もあると、研究者や医師の間でもとらえられるようになってきたという。

「もちろんストレスが原因ではないと完全否定するわけではありません。多くの患者さんを診ていると、親族が亡くなられたり、家族や仕事で大きな問題が起きて精神的に追い詰められた後に発症する人もいるためです。恐らくストレスがストレスホルモンを誘導して免疫細胞に影響を与える可能性があるのではないかと思われます。

　一方で、最近では新型コロナウイルスに対するワクチン接種の後や、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザウイルス感染の1～2か月後になる人もいるほか、出産するたびに起こる人、多忙な時期になるとなる人などもおり、さまざまなきっかけがあります」

「円形」以外はストレスの影響が強い

　そもそも脱毛症は、円形脱毛症の他にも複数ある。例えば薄毛や抜け毛に代表される「男性型脱毛症」や、皮脂の増加などによって生じ、頭全体に脱毛が起きる「脂漏性脱毛症」、薬剤や感染症に起因する脱毛などだ。これらの原因についても聞いてみた。

「ストレスと脱毛症はある程度、関係していると思われます。ストレスはストレスホルモンの産生を促します。私たちの研究でも、このストレスホルモンは免疫細胞に影響を与え、毛髪にダメージを与えることが基礎実験で分かっているのです。

　その反面、円形脱毛症ではこのストレスホルモンによるダメージを抑える『ステロイド産生反応』という反応が弱いことも報告されています。つまりストレスホルモンによる影響を受けやすい脱毛症といえます」