エンジン不正問題で「営業利益8割減」の日野自動車。苦境の中で“追い風要素”も
不正問題発覚以前から減収が続く
近年の業績推移を見たのち、エンジン不正問題が同社の業績に与えた影響を見ていきましょう。日野自動車はエンジン不正問題が発覚する以前からコロナによる業績不調が続いていました。2019/3期から2022/3期までの業績は次の通りです。
【日野自動車株式会社(2019/3期~2022/3期)】
売上高:1兆9813億円→1兆8156億円→1兆4984億円→1兆4597億円(※)
営業利益:867億円→549億円→123億円→338億円(※)
最終利益:549億円→315億円→▲75億円→▲847億円(※)
国内売上台数:7.2万台→6.7万台→6.0万台→5.8万台
海外売上台数:13.2万台→10.8万台→7.4万台→10.0万台
(※)「収益認識に関する会計基準」を適用
売上高が過去最高を記録した2019/3期
2019/3期は売上高が過去最高を記録した年です。同年は国内における大中型トラックの需要が横ばいだった一方で小型トラックの需要が4.9%伸びました。市場環境が追い風となるなか、シェアトップとして安全性能・環境性能が評判の日野自動車に関しては国内売上台数が6.9%も拡大しました。海外向けは主力のインドネシア市場が好調だったこともあり、海外売上台数は13.3%も伸びました。
翌2020/3期は景気拡大からの緩和や排ガス規制強化に伴う前年の駆け込み需要の反動など、国内においてトラックの需要減少要因が重なり、同社の売上台数はバスと合わせて7.8%減少しました。海外向けも市場成長の鈍化や、国内より早かったコロナの感染拡大により、減収となっています。利益面では減収がそのまま減益につながった形です。
2021/3期は国内向け・海外向けの両方がコロナによる需要減の影響を受けました。特に海外向けの影響が大きかったようです。営業利益は黒字を維持しましたが、米国でのエンジン認証試験において課題が生じた関係上、カナダ工場での生産が停止となり、関連費用146億円を計上したことで最終利益は赤字となりました。関連費用にはディーラーやサプライヤーへの補償費用が含まれます。