遅刻、借金、空伝票…28歳「見えっ張り営業マン」が招いた悲劇
遅刻は社会人として恥じるべきこと。だが有馬さんには、反省の色すらなかったそうです。
「しかも年中、『カネがない』と言いながら、クラウンなど500万円以上の高級車を乗り回していたんです。中古かもしれないけど。明らかに借金の理由は、彼の見栄っ張りが原因ですよ」
そしてとうとう複数の空伝票が元で、懲戒免職になってしまったのです。冒頭部分で紹介した営業成績も実は、大きい数字を口にしたものの、半分も達成しなかったそうです。
見えっ張りなビジネスマンが生まれる理由
「前職の大手人材派遣会社でも、同じようなことをやっていたのでしょう。インセンティブがもらえるほどの営業成績もなく、達成できない自分へのジレンマもあって、見栄を張るしかない。本人は、かなり孤独だったと思いますよ」
なぜ、有馬さんのように、仕事で見栄っぱりになってしまうのでしょうか。矢加部さんはこう喝破します。
「これまでの人生で、頑張ったらできた! という達成感がなかったからです。人は成功体験を積みながら『次はこれを達成しよう』というやる気が出てきます。やる気はモチベーションを促し、さらに成功体験を増やします。たとえ失敗したとしても、失敗しない方法を模索したり、考えたりと、努力していくものです。やがて次にトライアルしたことが成功すると、さらに成長する。このプラスの方向にいけなかったのは、彼の弱さにあるのでしょう」
弱い人間だからこそ、見栄を張り、嘘をつき、結果的に居場所を失ってしまう。かっこ悪さを引き起こしてしまうのです。さて気になる有馬さん。今はどうしているのでしょう。
「2年ぐらい前のSNSでは、地方の同業他社に入社し、支店長など活躍しているなどの投稿がありましたが、それ以降は更新がありませんね」
また、同じことを繰り返していなければ良いのですが……。みなさんも見えっ張りな人には注意しましょう。
― 特集・Around30解雇のリアル Vol.5 ―
<取材・文/夏目かをる イラスト/真船佳奈>