五輪汚職で会長ら逮捕。異色の大企業KADOKAWAはなぜ“7000万円賄賂”を払ったか
出版枠を設けたが、講談社は辞退
各報道によれば、高橋氏はオフィシャルサポーターに出版枠を設け、KADOKAWAと講談社に話を持ち掛けたと言われています。結局、講談社は辞退することとなり、KADOKAWAが残りました。スポンサー料は2億8000万円程度だったとみられています。
高橋氏のこうした働きかけにより、招致段階で930億円と見積もられていたスポンサー収入は、3000億円以上にまで膨らみました。従来は税金に賄われるべき金額を、スポンサー収入で穴埋めすることができたのです。
ちなみに、歴彦氏は逮捕前の9月初旬に本社で記者の取材に応じています。賄賂については「本当に思いがけない感じで戸惑っていることばかり。事実関係は僕には分からない」「(賄賂についての認識)全くありません」「社員を信じますよ」と、一連の疑惑を否定するような発言をしていました。
“3大出版社”を大きく引き離す存在に
さてKADOKAWAの角川歴彦氏は、東京オリンピックのスポンサーになることに並々ならぬ情熱を注いでいたと言われています。KADOKAWAは1945年に国文学者・角川源義氏が立ち上げた角川書店が前身。1952年に発刊した昭和文学全集で成功を収めるなど、硬派な文芸出版社でした。
その路線を変えたのが歴彦氏の兄・春樹氏。映画『ある愛の詩』の原作本を刊行すると、ミリオンセラーとなり、その後も「角川映画」ブームを巻き起こします。一方の歴彦氏は『ザテレビジョン』『東京ウォーカー』『コンプティーク』といった雑誌部門を育てるなど、大衆路線へと舵を切りました。しかし、経営路線の対立により、春樹氏から副社長の辞任を言い渡され、一度は退社。
しかし春樹氏がコカインの不法所持で逮捕されると、経営に復帰。歴彦氏が得意とする、ライトノベル、ゲーム、アニメなどの分野で会社を成長させていくのです。2014年10月には「ニコニコ動画」のドワンゴと経営統合して世間を驚かせたように、従来の大手出版社とは違う異色の企業へと変貌を遂げました。
KADOKAWAの2022年3月期の売上高は2212億円。講談社2021年11月期の売上高は1707億円、小学館2022年2月期が1057億円、集英社2022年5月期が1951億円。KADOKAWAは売上高において、日本のいわゆる“3大出版社”を大きく引き離す存在となりました。