悩み相談してはいけない!職場に潜む「ブラック上司」の見分け方
アドバイスがほしいのか? 気持ちを理解してほしいのか?
しかし、私の産業医面談にくる人たちの話を聞いていると、多くの働く人にとって黙って話を聞いてくれる上司をみつけることは、そんなに簡単ではないようです。
その理由は2つあります。1つ目は、優秀な上司ほど、部下の話を少し聞けばその問題解決方法がわかってしまいアドバイスしがちだということです。
2つ目は、年配な上司ほど、自分の経験から照らし合わせて何か助言をしたくなってしまうということです。
「俺の場合はこうだった」「俺はこうやってきた(からお前もできるはず)」というフレーズを聞いてがっかりした経験、あなたも思い当たるのではないでしょうか。
このような“がっかり”を防ぐためにできることは、話を黙って聞いてくれる人を選ぶほかに、もう1つあります。
それは、相談者であるあなたが、アドバイスがほしいのか、話を聞いてほしいのか(自分の気持ちを理解してほしいのか)、相手に伝えることです。これを伝えることで、アドバイスを抑えてあなたの気持ちを聴くことに専念してくれる人もいます。
相談相手選びでもう1つ大切なことは?
不安やストレス、悩みがあった時、人に相談することで、9割の人が楽になります。この時の相談相手選びで、もう1つ大切なことがあります。
それは何かあった時に自分が話したい人、聞いてほしい人をあらかじめ決めておくということです。
不安やストレス、悩みについて、誰かに相談しようと思っても、知らないうちに自分の状況が悪くなっていると、どのように相談相手を選んだらいいのか、わからなくなっているときもあります。結果、相談すべきでない人に相談してしまったなどとならないためにも、そうなる前に、あらかじめ相談相手を決めておくが大切です。
相談内容によって、仕事のことは会社の人には相談しづらいからプライベートな関係(家族や友人)に、とか、仕事のことだからこそ家族や友人ではなく上司や同僚に相談に、など、自分の考えを整理し、具体的に誰に何を相談すべきかは、平常時から備えておきたい心構えです。
私の産業医としての経験上、メンタルヘルス不調で休職となったとき、家にいても友人や家族など、日頃から話し相手のいる人のほうが明らかに回復は早く、再休職も少ないです。
友人がたくさんいる独身者が、自分がメンタル休職であることを友人には言えず、友人たちからいつものように連絡が来ることが辛いと訴える、連絡がないならないで1週間、誰とも話すことなく過ごし孤独で辛いと訴える、このような方がたまにいますが、産業医としてなんとも言えない気持ちになります。
また、ご結婚されているのにもかかわらず、配偶者に自分の状況を言えない人は、明らかに一番回復が遅く、再休職の確率は高いと感じます。
ありきたりの言い方にはなりますが、家族、友人、上司、同僚を問わず、「なんでも話すことのできる人」をもつことこそ、不安やストレスや悩みに対処する第一歩になるのだと思います。
繰り返しますが、不安やストレス、悩みは、相談することで9割の人が楽になります。だからこそ、不安やストレス、悩みを持つ前から、誰に相談するのかを考えておくこと、黙って話を聞いてくれるサポーターを持つこと、ぜひ、覚えておいてください。
<TEXT/武神健之>
【引用 *1】
「労働安全衛生調査(実態調査)(平成28年)」
17大産業に属し、常用労働者を10 人以上雇用する民営事業所のうちから無作為に抽出した約1万4000 事業所並びに当該事業所に雇用される常用労働者及び受け入れた派遣労働者のうちから無作為に抽出した約1万8000 人を調査客体とし、それぞれ9564事業所及び1万0109 人から有効回答を得ました(厚生労働省より)