会社員を「引きこもり」だと勘違い。テレワーカーを知らない母親の災禍
帰省した姉まで引きこもりだと勘違い
ところが、テレワークを始めてから最初に迎えた正月。帰省した姉からも「お母さん、あんたのこと心配してたよ」と引きこもりをやめるように説教を受けます。
「母親の話を真に受けてしまったようで、私が説明しようとしても『あんたは昔からすぐ言い訳するんだから!』と話を聞いてくれません。私より一回り近く年上の姉は、短大を出てすぐ結婚したので働いた経験がほとんどなく、テレワークのことも全然知らないようでした。そして遺伝なのか母親と同じく人の話をちゃんと聞こうとしない。そんな態度に嫌気が差して自分の部屋に戻り、その日の夕食は近くのファミレスで済ませました」
しかし、翌日に姉の夫である義兄が仕事の関係で1日遅れで到着。姉から「いつまでもニートみたいな生活をしていたらダメだってあなたの口からも言ってやってよ」と促され、渋々といった態度で範一さんに聞いてきたといいます。
「でも、義兄はさすがにテレワークのことは知っていると思い、これまで母や姉に説明したのと同じ話をしたんです。そうしたら『そういうことか』とすぐに理解してくれました。義兄の口から僕が引きこもりではないこと、正社員で今まで通りお給料をもらっていることを改めて説明してくれたんです。姉はそれで自分の誤解だったと謝ってくれましたが、こっちが散々話しても信用してくれなかったのに義兄が1回説明したらこれですから。姉の自分に対する信用のなさにショックを受けましたよ」
「外で働いてほしい」と体裁を気にする母親
ただし、問題なのは母親。テレワークという働き方については理解したそうですが、「それでもご近所さんの目もあるし、ちゃんと毎日会社に行ってほしい」と言われてしまったそうです。
「どうやら私のように在宅で働くのは、母親の価値観では恥ずかしいみたいです。そこまで周りの反応を気にする人ではなかったのですが、息子が昼間も家にいるのは仮に在宅で仕事をしていても近所の人はそう見てくれないって。体裁のために毎日出社しろというのは暴論だと思いましたが、これ以上母親に言っても無駄だと思って実家を出ることにしたんです」
それからすぐ家を探し、1月中旬には実家と会社の中間くらいの場所にあるマンションに引っ越し。今は誰かに引きこもりやニートと言われることもなく、快適な日々を過ごしています。
「母親には今は毎日会社に出社しているとウソをついています。一緒に住んでないからバレないし、これで安心してくれるなら安いものです(笑)」
働く側にとっては通勤などの負担のないテレワークですが、在宅で働くことを好意的に見ていない人がいるのも事実。ひとり暮らしならともかく、実家住まいだとこういうこともあるのかもしれませんね。
― 特集・兄弟姉妹のトホホな話 ―
<TEXT/トシタカマサ イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>