「IT企業はモンスター」と奇異な目で…都市部と地方の“ITスキル格差”はあるのか
PCを使えない学生たち
ちなみに、ネット環境の整備やスマホの普及が、地方と都市のITスキル格差を縮小させた、あるいは何か影響を与えたのだろうか。その点について、小田氏は新たな不安点を示す。
「上の世代はわかりません。ただ、少なくとも学生を見ている限り、首都圏出身の学生と地方出身の学生に差があるようには思えません。しかし、スマホの普及は大都市と地方に共通して、PCの活用能力を退化させた面はあるのかもしれませんね。
PCを全く使えないことはないと思うのですが、PCでExcelを使うような少々複雑な操作をすることを面倒臭がる、あるいは不得手とする学生は一定程度いるように感じます。また、SNSを使えばWebページを作らなくても情報を発信できるため、『拡張子がどうの』と言っても通じないことは珍しくないです。
データソースまでさかのぼり、自ら分析して、それを活用するスキルを身につけておかないと、的確な現状分析や将来戦略を描くことに不自由するでしょう。もちろん、スマホやタブレットを使用すれば、ある程度は対応できます。それでもなお、実践的な分析を行う際にはPCのほうが使い勝手が良いため、スマホだけに依存すると困ることが出てくると思います」
成功した徳島の取り組み
もし地方勤務になった場合でも、ITスキル・ITリテラシーを高める必要はあるのか。
小田氏は「あまりITスキルでの競争力にこだわるべきではないと思います。むしろ、それ以外のところで、自地域ならではのアピールポイントを発見することのほうが大事なのではないでしょうか」と答えるが、「ただ、そのアピールポイントをWebやSNSを活用して発信することは求められます」と、ITスキルを駆使して自己PRにつなげている事例を教えてくれた。
「徳島県の『サテライトオフィスプロジェクト』をご紹介します。徳島県は、2013年から神山町や美波町などでサテライトオフィス開設の推進を行い、2020年度末時点でのサテライトオフィスの数は北海道(86か所)に次ぐ77か所で全国2位の状況です。
今でこそ、全国的なワーケーションブームになっていますが、これもサテライトオフィス誘致から派生してきた動きで、その走りは2017年ごろの徳島県の“にし阿波地域”にあります。そして、にし阿波地域の美馬市や三好市では古い商家をリノベーションしたコワーキング施設を作り、そこで仕事をしながら恵まれた自然観光資源を楽しむワーケーションの魅力を発信しています。
この様子はSNSやYouTubeなどで発信しており、ヨーロッパからワーケーション目的でやってくる人もいるようです。そうした関係人口(移住や観光ではない、地域と多様に関わる人々を指す)を地元企業と交流させていくことが行政のねらいでもあります」