中国離れが加速するハリウッド。次なる舞台は“柔軟でオープン”な隣国か
『トップガン マーヴェリック』にも当初は制約が
頭を悩ませているのはディズニーだけにあらず、ソニー・ピクチャーズも状況は近しい。米報道によると『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、中国政府からの「自由の女神が映るシーン」をカットする要求を拒否したことで公開が中止に追いやられたのだ。それにともなう形で『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』や『モービウス』も公開できないままなのだ。
日本でも大ヒットしたパラマウント製作『トップガン マーヴェリック』も、“中国離れ”の流れを色濃く反映した作品といえよう。というのも同作は当初、中国テクノロジー大手のテンセント・ホールディングスが共同出資することになっていたのだが、のちに取り下げられた経緯がある。
1986年公開のオリジナル『トップガン』から、2019年に公開された新作予告編で削除されていたのは、トム・クルーズ演じる海軍パイロットの背中にあった、日本と台湾の国旗入りのワッペン。これは米巡洋艦が1960年代に日本と台湾に寄港した記念のものなのだが、予告編では意味のない紋章に変えられていた。
それがテンセントの離脱後に実際に封切られてみると、国旗入りワッペンが復活していた。中国資本が介入することで、制約がいかに増えるのかがよくわかる事例だろう。
円満な製作会社はあるのか
前述の各社と比較して、円満な関係を築いているのがワーナー・ブラザースや、ユニバーサル・ピクチャーズだ。
同じアメコミ作品でも、ワーナーのDCコミックス原作映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は公開。今後も『ブラックアダム』や『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム(原題)』などが、通常通りの上映が予定されている。
ユニバーサルの『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は中国でもヒットしたし、『バッドガイズ』や『ミニオンズ フィーバー』も順調に公開された。こうしたことから、作品の内容が純粋な検閲基準とはなっておらず、配給会社との関係性にも左右されていることが伝わってくる。
だが、中国で順調そうな2社にとっても、市場そのものへの魅力減退は否めないのではないかと筆者は考察する。なぜなら現在、中国の興行収入ランキングは、半分を自国製作映画が占めることが少なくない。それを中国のエンタメ政策が鎖国的とまで批判せずとも、検閲の高いハードルを越えてもなお開拓したいような、ブルーオーシャンではなくなっている可能性が高い。