マクドナルド、V字回復の背景。客層は本当に良くなったのか?
店舗の客層が良質化した背景
いずれにせよ、少々の不公平はどの組織にもあることで、大切なことは会社として結果が出ているか否かです。マクドナルドで業績が回復した理由については、優遇された社員が活躍(?)したことや店舗やメニューの改善の奏功だけでしょうか?
筆者はそれに加えて、大きな時代の流れがあるのかと捉えています。実は筆者自身が大ファンですので、品質問題が起きた時期も関係なくよくマクドナルドに行っていました。
その時期は店舗が空いていることもあったからか、『闇金ウシジマくん』で苦境に立たされる側のキャラクターのような雰囲気の人も多かったり、ホームレスに近い雰囲気の人たちもよくいたりと、なかなか厳しいもので、幼い子供を連れて行くのは少し憚られるようなタイミングもあったように記憶しています。
ところが最近は、いわゆる中流からプチリッチ層の明るいファミリー層まで来るようになっていて、客層が大きく変わってきているように感じます。
’15年12月からの2年間で、月次の対前年比で客数は対前年比をプラスで継続させていますが、客単価も対前年比でマイナスだったのは1回のみで、多い月はプラス15%以上を記録しています。客数の増加のみならず顧客単価も上がっていることについて、客層の変化による結果ではないかと考えます。
では、どうしてそうした客層が入ってきたのか。
それは、店舗が奇麗になったことやメニューの改善もありますが、筆者は格差拡大によって自分たちがいつ「下」に転落するかもしれない、この先どうなるかわからないから貯蓄しようという思いが中流層に拡がってきてように推測しています。経済的に安定した家庭でも、特に子供がいる場合には行きやすくなったのではないかと思います。
3年ぶりの高水準だった飲食業の倒産
ファミリーレストランが昔と比べると値上がってきているので、例えば家族3人で行って普通にセットものを頼んだりしても5000円を超えてきます。5~10年前の感覚が残っていると、「え、ここで5000円とか払うの? 少し痛いかも」という感覚になります。
ですがマクドナルドでは、今でも2000円かからないくらいになります。それほど差があると、ある程度収入の高い家庭でも喜んで行って、「じゃあ、(まだ安いから)アイスも頼むか?」など1品追加で頼んで子供を喜ばせられます。そうして1品追加できる客層が増えてくることで、客単価が上がってきます。
東京商工リサーチは、2017年の飲食業の倒産件数(速報値)が前年比19.2%増の762件だったとする調査結果をまとめています。’14年以来、3年ぶりの高水準です。仕入れ価格の高騰や人手不足による人件費増加などコスト増のほか、景気実感の乏しさを背景とした個人消費の鈍さが影響したとみられると報じられています。
業種別では、日本料理、中華料理、フランス料理店などの専門料理店が、前年比13.4%増の203件。以下、食堂・レストランが同34.2%増の200件となっています。原因別では、販売不振が同17.7%増の618件と、全体の81.1%を占めていました。
外食を利用する人たちが皆マクドナルドに流れて行っているわけではありませんが、新聞でよく「アベノミクスで景気回復!」と報じられていますが、そうでもない流れがどこかにある現実の一端を表している好決算であったのではないかと危惧しています。
<TEXT/中沢光昭>