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<漫画>パート先の店長と不倫…“地方のドロドロ人間関係”を漫画で描く理由

暮らし

愛の厄介さを描きたい

泥濘の食卓

関係の解消を迫られ物語は急展開 (C)伊奈子/新潮社

――突飛な行動といえば、登場人物が急に犯罪スレスレの行動に走りますけど、あれも伊奈子さんの考え方と同じなんでしょうか?

伊奈子:いやいや! もちろん犯罪は駄目ですよ。でも描くときは、自分の倫理感を捨てて、登場人物が考えてるままにしようと思って描いてます。ストーカーとかは絶対駄目だと思いますし、はい。もちろん不倫もダメだと思ってます。全部ダメだろうと思いながらも、キャラクターになりきって描いてますね。

――愛してるからこそ逸脱した行動をとってしまう登場人物たちには、むしろ共感してしまいます。

伊奈子:悪意があるわけじゃないですからね。だからこそを厄介でもあるんですけどね。愛の厄介さみたいなものは描きたいです。だからといって抽象的な愛を表現するというよりは、不倫の物語なんだけど、でも不倫がメインじゃなくて、主人公の深愛ちゃんが何を考えて、どう生きるかみたいなのが、描きながら楽しみです。

彼らなりの幸せというかを見つける

――成長物語のような側面もあるのでしょうか?

伊奈子:登場人物だれしもが少しずつ心が変わってきてるので、それぞれのキャラクターが成長する群像劇のような、各々が持ってる閉塞感からどう抜け出すかみたいなのを描いていきたいですね。

――もしよければ、ラストに向けてどうなっていくのか、教えてもらえませんか?

伊奈子:こういうラストっていうのは決めてはないですけど、殺生はしないでおこうと、自分の中で決めてます。閉塞感の行きつく先が、みんな殺して終わりっていうの、ちょっとダメだろうって思うので、できれば爽やかな終わり方にしたいです。まだふわっとしか決まってないんですけど、地獄は地獄のままでしたっていうのではなくて、やっぱり爽快感があるように、彼らなりの幸せというかを見つけるといいなみたいな、ちょっとチープな感じになっちゃうんですけど本当にそう思ってます。

<取材・文/永森龍太>

【伊奈子】
6月20日、愛知県生まれ。ふたご座。2016年に「第75回ちばてつや賞ヤング部門」で大賞受賞。2020年11月より「泥濘の食卓」を「ututu(ウツツ)」で連載中。『泥濘の食卓 1巻』(バンチコミックス)が発売中。好きな食べ物は豆製品と乳製品
Twitter:@naguruzo_

泥濘の食卓 1巻

泥濘の食卓 1巻

田舎町のスーパーで働く「深愛(みあ)」は、パート先の店長と不倫関係にあった。何のとりえもない自分に優しくしてくれる店長が大好きな深愛。しかし突然、別れを告げられる。理由は妻の鬱。家族の為に使う時間が必要で関係を続けられないという店長の言葉は耳に入らず、深愛が導き出した答えは、「私はやっぱり、店長と幸せになりたい」。その想いが一つの家庭を泥濘へと引きずり込む――。

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