日本にも「北朝鮮スパイ」はいる。大手テレビ局Pに聞いた“暴露小説”の中身
海上保安庁は個性豊かな組織
――海上保安庁は小説の登場人物のように個性豊かな組織なのでしょうか?
川嶋:1人ひとりそれぞれが性格も違いますし、そういう面では面白い組織だと思います。一方「キャリア組」と、「ノンキャリア組」というのもあり、国交相から偉い立場の人が入ってきたりするので、いびつな部分もあるんですが。
――FOXというのは実在する組織なのでしょうか?
川嶋:FOXというのは自分たちで考えた造語ですが、「海上保安庁情報調査室」というのは存在しています。しかし組織図の中には明記されていません。
海上保安庁内に実在するスパイ組織
――組織図にないだけあって、海上保安庁情報調査室の予算は少なめなのでしょうか?
川嶋:海上保安庁自体の予算は全体的に少なめになっています。財務省との予算折衝の中で、海上保安庁職員の携帯電話料金が経費として落ちなかったりするようです。「海上保安庁は海上で仕事をするのに、なぜ、そんなに通信費がかかるんだ」と言われるようです。車のガソリン代なども、「なぜ、海で生活しているのに、地上での交通費がかかるんだ」と言われて経費が落ちないようです。
――スパイ活動の実態がないから予算のつけようがないということなのですかね。
川嶋:そういうことでしょうね。山下さんが組織に入ってからは何度も北朝鮮スパイの密漁や麻薬の密輸などの摘発をしてきました。本にも出てきますが、農薬散布のドローン輸出を摘発したりと、かなりたくさんの事件を解決してきました。
この成果によって情報調査室のメンバーを増やすことができ、NSC(国家安全保障会議)という官邸の情報危機管理室のような行政機関ができた際に、海上保安庁もそこに名を連ねることができました。これらも山下さんの活躍のおかげだと思っています。