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日本にも「北朝鮮スパイ」はいる。大手テレビ局Pに聞いた“暴露小説”の中身

ビジネス

 海上保安庁の元日本人スパイから直接聞いた話をベースにした暴露系情報小説『FOX 海上保安庁情報調査室』(徳間書店)が2022年5月28日に発売された。著者の川嶋芳生さんは現在50代で、某大手テレビ局のプロデューサーをしており、当書は海上保安庁関係者などに長い年月をかけて取材をし、フィクションという形で世に発表した意欲作である。

川嶋芳生

某大手テレビ局プロデューサーの川嶋芳生さん

 前後編にわたるインタビューの前半では、著者の川嶋さんに執筆の動機や、海上保安庁という職業について話を聞いた。

“事実関係の確認が難しい”から小説に

――「小説ですのであくまでフィクションです」とのお話ですが、「元FBI捜査官も絶賛した暴露系情報小説」とも耳にしました。執筆にあたってなぜフィクションという形を取ったのでしょうか?

川嶋芳生(以下、川嶋):海上保安庁や日本で過去にスパイをされていた方に取材した中で、被害届が出されず事件化しなかった問題が数多くありました。なんとか世に出したいと思いましたが、「新聞やテレビの報道はチェック機能が働いており、2~3回以上、裏を取ってからじゃないと難しい」と言われました。

 もともとは「ノンフィクションという形で書籍化しましょう」という話だったのですが、それも“事実関係の確認が難しい”とのことで、フィクションという形にすれば問題ないだろうとなり、書き始めました。

 かといって全て空想の話ではなく、本当は裏でこんな事件が起こっているんだよという暴露系小説となっております。小説の登場人物で山下さんという方がいるのですが、そのモデルの方が海上保安庁を卒業し、公務員の守秘義務違反にならない年月が経過したあと、より詳しくお話をうかがい、ストーリーを組み立てて行きました。

日本にも「スパイ」はいる

徳間書店

『FOX 海上保安庁情報調査室』(徳間書店)

――山下さんは実在する人物だったのですね。

川嶋:そうですね。僕が1番驚いたのは日本にもスパイがいるんだという点と、このような破天荒な人物が公務員にいるんだという事実です。諜報機関、諜報活動というのは日本人にとってはマイナスのイメージが強いですが、市民の命を守ったり、邦人の身の安全を確保するには各国と連携した諜報機関という存在が大事だと思います。

――海上自衛隊と海上保安庁の違いというのは何なのでしょうか?

川嶋:海上自衛隊は軍隊なので規律が重視されて、上官の命令は絶対ですが、海上保安庁は1人ひとりの判断が重んじられていて、自分で考えて行動するという組織です。巡視船の船長は全て自己判断で動いていいことになっており、組織の上層部にお伺いを立てることなく、目の前に不審船がいたら拿捕しなくてはなりません。不審船に乗り込んで調査する場合も現場の判断に委ねられています。海上保安庁は皆がそれぞれ自分に責任を持って行動している人が多い組織です。

FOX 海上保安庁情報調査室

FOX 海上保安庁情報調査室

某大手テレビ局の記者による長年の取材で培った知識と人脈、新たなる証言をもとに構成した暴露型情報小説

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