「石油元売り」大手3社が最高益に。原油価格上昇でもなぜ儲かるのか
輸入した原油をガソリンなどの石油製品に精製し、主にガソリンスタンドで販売する「石油元売」業界ですが、2022年3月期の業績は純利益最高額を更新するなど大手3社とも好調なようです。
仕入れ値が上昇すると利益が目減りしそうな印象がありますが、石油業界はなぜ儲かっているのでしょうか。石油元売の仕組みから、同業界にとって逆境ともいえる脱炭素への取り組みまで探っていきます。
大手3社はどんな事業を展開しているのか
石油元売業界の売上高トップ3はENEOSホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングスです。いずれも石油産出国から原油を輸入し、ガソリンなどの燃料、エチレンなどの基礎化学製品として精製し、販売するビジネスモデルをとっています。3社ともガソリンスタンドを展開しているため、社名は消費者の間で広く知られているところです。
例えばENEOSホールディングスの場合、事業セグメントは以下のようになっています。
【ENEOSホールディングスの事業セグメント】
1)エネルギー事業(81.8%):ガソリン、灯油などの燃料およびエチレン等の基礎化学品の精製・販売
2)石油・天然ガス開発事業(2.2%):油田、天然ガス田開発
3)金属事業(11.8%):金属鉱山開発、金属販売
4)その他(4.1%):アスファルト合材の製造・販売
※()内は2022/3期売上高10兆9218億円に占める割合
出光興産、コスモエネルギーHDも同様に、燃料のほか基礎化学品事業や油田開発、電力事業も手掛けていますが、売上高の7割以上を燃料関連事業が占め、石油元売業界の業績は特に燃料需要によって左右されることになります。
コロナ禍でも好調の各社
そしてコロナ禍の近年は3社とも業績が好調なようで、2019/3期から2022/3期までの業績は以下のようになっています。
【ENEOSホールディングス(2019/3期~2022/3期)】
売上高:11兆1296億円→10兆0118億円→7兆6580億円→10兆9218億円
営業利益:5371億円→▲1131億円→2542億円→7859億円
最終利益:3223億円→▲1879億円→1140億円→5371億円
まずは、ENEOSホールディングスにおける売上高の推移を見ていきましょう。2020/3期は期末から国内でコロナの感染が広がり、前年度より燃料需要が低下しました。また、需要低下に伴う燃料価格の下落も影響し、売上高の減収につながっています。
翌2021/3期は1年中コロナの影響を受けた形です。外出控えによってガソリン需要が減少、航空機用ジェット燃料や工場で使われる産業用燃料の需要も減少したことで大幅な減収となってしまいました。一方、2022/3期は依然コロナの感染が続いていたものの、経済活動は平常に戻りつつあり、燃料需要が回復しました。
また、急な需要回復によって世界中で燃料価格が著しく上昇し、売価の高騰がそのまま増収に貢献したようです。ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料費高騰も影響しているでしょう。