「ゲーム=悪」なのか。元“ゲーム漬け”だった医師らが語る、誤解と真実
ゲームに没頭することが逃げ場にも
中藤:自分もそうでしたが、なにか心に辛さを感じているときに、ゲームに没頭することが逃げ場になる場合もあるんです。そこで心を癒したり、パワーを取り戻して社会復帰できることもあります。依存が不登校からの回復への第一歩になっているという見方もできるのでしょうか。
阿部:そこはすごく難しいです。思春期は心の成長の発達過程なので、依存に陥りやすいのは間違いありません。一方、ゲームはログインボーナスがあったり、ものすごくはまりやすく作られています。いろいろなストレスを抱えているときに、逃げ込みやすいんですね。逆にそれで心のバランスが保てる子もいるので、周りが無理やり介入すると逆効果になることも多いです。ゲームと上手に付き合うことが重要です。
竹谷:ゲームをし続けると目が悪くなるとか、ずっと同じ姿勢で健康によくないというエビデンスはありますか?
阿部:暗い場所や近い距離で画面を見れば視力は落ちますが、ゲームのせいで目が悪くなることは証明されていません。そこはイメージが先行していますね。ただゲームをやり過ぎると、身体的な痛みが出るとか、眼精疲労や頭痛が起きるというデータはあります(NIH「Managing the health of the eSport athlete: an integrated health management model」)。
このような症状をコンピュータビジョン症候群と言いますが、これは1日3時間以上モニター前で作業をする人の90%に起きるというデータもあります(Mashalla YJ. Impact of computer technology on health: Computer vision syndrome (CVS) Med Pract Rev. 2014;5:20-30.)。ゲーム特有の症状かどうかは更なる研究が必要とされています。
「ゲームをやめさせる」に重要なのは
中藤:保護者としては、子どもの身体を心配しているのだとは思います。でもあまりにゲームを反対されたり、理解してもらえないと、本人がそこから抜け出したい、何か相談したいと思ったときに、親に話せなくなってしまいます。
阿部:重要なのは対話です。依存状態の子に「ゲームをやめなさい!」と否定して、依存物質を急に取り上げると、暴力につながる可能性もあるので危険です。反対する前に、大人がゲームについてもっと知っておくべきです。ゲームは本当に楽しいですし、コミュニケーションツールとしても使えますし、仲間も増えます。例えば『桃太郎電鉄』なら地理が覚えられるといった教育的な要素もあります。子どもとゲームについて理解できると良いと思います。
竹谷:大人は「こうでこうだからダメなんだよ」とロジックで話を詰めていくことができますよね。でもたぶんそこじゃないと思うんですよ。正論を言われると、感情で「嫌だから嫌だ」と反発してしまう。
阿部:子どもと対等な目線で考え、一緒にゲームに関するルール決めをできると良いですね。