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イーロン・マスクはTwitterをどう変えるのか。買収で“ユーザー離れ”の可能性も

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Twitterならではの特殊な事情

Twitter Tesla

 群雄割拠するSNSの地図上において、Twitterの立ち位置は微妙である。2010年より前には「新しいもの好き」の間で流行していたため、IT業界や出版業界の人物が実名で利用するケースが多かった。マスク氏が現在のアカウントを作成したのも、2009年の6月である

 それから数年が経ち普及期を迎えると、ハンドルネームを用いる半匿名のユーザーが激増する。「2ちゃんねる」や「ニコニコ動画」を居場所にしていた、いわゆる「ネットのオタク」とされる層で、アニメの画像など個人が特定されないアイコンを使い、Twitter特有の構文を発展させていった。

 さらにその後には、スマートフォンを持つことでインターネットを身近に感じるようになった層が実名アカウントを作るようになる。こうして、Twitterには実名ユーザーと半匿名ユーザーが共存するようになった。この奇妙な棲み分けはTwitterならではだ。

 過去数年Twitterが重視してきたのは、「顔出し」を厭わない実名ユーザーの側である。マスク氏は5月1日に「匿名性も重要である」旨ツイートしているが、オンライン空間の実名化は世界的な傾向であり、方向性が大きく変わる見込みはないだろう。

トランプのアカウントが復帰する可能性も

ドナルド・トランプ

ドナルド・トランプ氏 © Gints Ivuskans

 マスク氏がTwitterを買収した理由は、「言論の自由のため」だとされている。すなわち、買収前のTwitterは「言論の自由に反するプラットフォームだった」と主張したいわけだ。

 端的に言って、マスク氏の政治的な立ち位置は“反リベラル”である。つい最近も「左派」を批判する風刺画を共有しており、アメリカ共和党寄りの思想の持ち主だとわかる。このため、アカウント停止処分が続いているドナルド・トランプ元米大統領をTwitterに復帰させる可能性が高いと報じられている。

 残念ながら、現代のSNSはテロリズムと無縁ではない。ISIS(通称「イスラム国」)などの組織がTwitterやYouTubeを使ってリクルートを行っていたほか、英語圏における近年のテロ事件として、2021年1月のアメリカ合衆国議会議事堂襲撃が挙がる。

 これはトランプ元大統領に影響された右派が起こしたもので、大統領職にあったトランプ氏が攻撃的な自説を開陳していた場もTwitterだった。これが運営チームにより「暴力的な組織に関するポリシー」に違反すると判断され、アカウント停止につながった形である。

 トランプ元大統領のアカウントが復活するとなると、議事堂襲撃を扇動したツイートが「暴力的」であるという判断も差し戻すことになるため、そのメッセージは強烈だ。

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