コロナ前から赤字だった「白洋舎」。苦境のクリーニング業界の懐事情
コロナ禍では第2、第3波とピークを迎えるたびに飲食業界や旅行業界の業績悪化が報じられますが、目立たないながらも苦しんでいるのが「クリーニング業界」です。
テレワークや外出控えでクリーニング需要が減ったほか、意外なところでは旅行客の減少も影響しているようです。決算資料を公表している「白洋舎」「きょくとう」の業績から同業界の推移を見ていきます。
業界全体で市場規模は縮小傾向
クリーニング業界と聞くと、一般消費者を対象とした街中の店舗をイメージしがちですが、なかには「リネンサプライ業」を展開する企業もあります。リネンサプライ業は保有する繊維製品を貸出して定期的に回収し、クリーニングしてからまた貸出す業務形態のことで、ホテルやレストランが対象です。
なお、クリーニング業界全体の流れを見てみると近年は少子高齢化・人口減少の影響を受け、市場規模は縮小が続いているようです。
決算資料を公表している上場企業の業績から、コロナ禍がクリーニング業界にどれくらい影響を与えてきたか見ていきましょう。
2019年の時点で赤字だった白洋舎
まずはシンプルで清潔感のある看板が特徴の「白洋舎」の業績を見ていきます。同社の主事業は2つあり、コロナ以前の2019/12期売上高の内訳は、個人向け「クリーニング事業」が230億円、ホテルやレストラン向けにシーツ・作業着を貸し出す「レンタル事業」が237億円となっています。2018/12期から21/12期の業績は以下の通りです。
【白洋舎業績(18/12期→21/12期)】
売上高:508億円→503億円→391億円→351億円
営業利益:10.3億円→2.1億円→▲47.4億円→▲29.1億円
最終利益:3.0億円→▲0.1億円→▲31.6億円→▲12.5億円
業績推移を見るとコロナ禍に突入した2020/12期から業績が大きく悪化したことがわかります。2019/12期は長期にわたる個人向けクリーニング需要の減少に加え、衣替え時期のずれ込みが影響し、クリーニング事業の売上高・利益がともに減少しました。レンタル事業は売上を維持したものの経費増加や設備投資によって減益となったようです。
不調とはいえ、2019/12期の全社売上高は維持、最終赤字はわずかにとどまっています。