10兆円企業が誕生間近も…実は「薬で儲かっていない」ドラッグストア大手5社の明暗と戦略
ドラッグストア業界は国内で成長が続く数少ない業界のひとつです。20年以上も続く市場拡大の恩恵を受け、店舗数が増え続けています。2020年度の総売上高は8兆円であり、10兆円超えも間近と言われています。
一方でM&Aを通じて業界再編が進められ、大手のシェアは拡大し、企業数は減少しています。業界の寡占化が進むなか、各社は今後どのような戦略をとっていくのでしょうか。 ドラッグストア各社がどのようなビジネスを展開し、近年どのように推移しているのか、2020年度の売上高上位5社から見ていきたいと思います。
薬で儲かっていないドラッグストア
そもそもドラッグストアとはいったものの、実は薬で儲かっていないのが同業界の特徴です。当初は医薬品販売を主体としていましたが、近年では食品や家庭用消耗品、化粧品や衛生用品が売上高の大部分を占め、医薬品は売上の2割程度しかありません。
みなさんもドラッグストアに寄る際、食品や歯ブラシ、シャンプーなどの衛生用品が目当てであることが多いのではないでしょうか。処方箋に基づいて薬を提供する「調剤」の併設率が10%にも満たないチェーンもあるようです。
そしてドラッグストア業界は都心部における出店の余地がなくなったほか、インバウンド需要の減少などのマイナス要因、大手による買収といったプラスの要因が働き、業界再編が進んでいます。
上位10社のシェアは7割もあります。一方のアインホールディングスや日本調剤を筆頭とする調剤薬局業界は上位10社のシェアが2割以下で、寡占化が進んでいません。
1)ウエルシアHD:初の1兆円超えを見込む
売上高:9497億円(21/2期)
店舗数:2217店
業界トップの企業はウエルシアホールディングスです。「ウエルシア」以外にも京都地盤のシミズ薬品が展開する「ダックス」などを展開しています。2022年1月には大阪に本社を置くドラッグストア「コクミン」の子会社化に関する発表をしており、都市部へのさらなる進出拡大を狙っている様です。
ウエルシアでは電子マネー「WAON」を使えますが、これは同社の株式の50%をイオンが握っているためです。近年の業績(18/2~21/2期)は以下の通りで、規模拡大が続いています。
【ウエルシア業績(18/2~21/2期)】
売上高:6953億円➝7791億円➝8683億円➝9497億円
営業利益:288億円➝290億円➝378億円➝430億円
店舗数増加のほか、M&Aを通じて小規模なドラッグストアチェーンを買収しているため安定して成長が続きました。コロナ禍では内食志向やマスクなどの衛生用品の売上が好調だったようです。2022/2期の売上高は、1兆210億円と初の1兆円超えを見込んでいます。
前述のように調剤薬局は寡占化が進んでいないこともあって、出店の余地があるとウエルシアは考えており、今後も調剤併設率80%以上を目標としながら出店を続けるようです。