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所得格差の拡大…なぜ若者だけ?非正規労働者を取り巻く“厳しい現実”

ビジネス

時給に左右される非正規雇用者たち

 厚生労働省の調査によると、2007年の若年層(15~34歳)の非正規雇用者は578万人。2017年は514万人で11.1%減少しています。

 しかし、若年層の労働人口も同様に減少しており、2007年は2035万人でしたが、2017年は16.5%減少して1711万人となっています。若年層の非正規雇用者の減少よりも、労働人口の減少幅のほうが大きくなっているのです。その分、非正規雇用の割合が高まっていることになります

 非正規雇用を雇用形態別で見ると、アルバイトとパートだけで70.5%を占めており、派遣社員や契約社員を圧倒しています。

雇用形態別

非正規雇用者の雇用形態 ※厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」より

 つまり、非正規雇用者の賃金の多くは時給に左右されることになります。

サイゼリヤだけで年間で約20億円が蒸発?

 この労働時間がやっかいです。2007年を境として労働時間は減少傾向にありましたが、コロナがそれに拍車をかけることとなりました。パートタイム労働者の総労働時間は2007年に1195時間。2009年には1139時間まで4.7%減少しています。

労働時間

総労働時間の推移 ※厚生労働省「総実労働時間の推移」より

 労働時間の減少が時給アップで賄えれば問題ありません。しかし、コロナによって労働時間が著しく減少し、時給でそれを埋め合わせることができずに月間賃金が抑制される結果となりました

パートタイム月間賃金

パートタイム労働者月間賃金の増減 ※労働政策研究・研修機構「パートタイム労働者の賃金」より

 これがコロナによる一時的なものかというと、そうとも限りません。例えば、サイゼリヤはコロナ収束後も24時間営業をしないと明言しました。午後10時以降の営業を取りやめたのです。

 サイゼリヤの東京都内の店舗数は212店。東京都の最低時給は1041円です。1店舗が365日稼働していたとし、深夜営業でアルバイトを3人雇っていたとします。24時から翌朝9時まで拘束して1時間の休憩を入れると、アルバイト人件費は単純計算で19億3300万円。サイゼリヤ1社、東京都の店舗だけを切り取っても年間20億円近い金額が蒸発してしまうのです。

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