ニトリが「利益率の悪い島忠」をなぜ高値で買収したのか?1年経ってわかった理由
のれんの負の影響も見逃せない
ニトリは島忠を買収した後の2021年2月末時点で255億9000万円の「のれん」を積んでいます。のれんは被買収企業(島忠)の純資産と買収額の差額で、貸借対照表の固定資産に計上されます。これはM&Aによる目に見えない価値などと呼ばれており、島忠のブランド力を可視化したものと解釈されることもあります。しかし、メリットだけではなく重荷になる場合もあるのです。
また、ニトリは主要な経営指標に「総資本経常利益率」と「総資本回転率」を取り入れています。総資本経常利益率とは、どれだけ総資本を有効活用して利益を出しているか見るもので、経常利益を総資本で割って算出します。総資本回転率は売上高を総資本で割ったものです。
総資本経常利益率を15%以上、総資本回転率2回以上を目標としています。買収前の2020年2月期は総資本経常利益率が16.8%、総資本回転率は0.99でした。島忠の収益性が低い上、のれんの計上で総資本が膨らんだニトリは、コロナ特需の終焉とともに目標値を大幅に下回る可能性があります。
利益率が悪い島忠をなぜ高値で買収?
島忠の2020年8月期の売上高は1535億4000万円、営業利益は95億9800万円で、営業利益率は6.3%。買収前からニトリ本体の収益性が悪化することは目に見えていました。それでも無理やり島忠を買収した背景には、ニトリ1店舗あたりの売上高が減少傾向だったことがあると考えられます。
ニトリの2014年2月期の1店舗あたりの売上高は11億7100万円でした。そこから段階的に売上を落とし、2019年2月期は10億5600万円で10%近く落としています。1店舗あたりの営業利益も同様で2014年2月期の1億9100万円から2019年2月期は1億7500万円で8.2%減少しています。少しずつ投資額に見合う収益性が得られなくなっているのです。