創業100周年の象印マホービン、「おしゃれ家電」に見た活路。累計37億円超の売上に
商品の設計者は相当の苦労を要した
そして2017年春先から商品開発をスタートさせ、象印マホービンとしての新たな挑戦が始まった。実はデザインを重視した商品を開発するのは、同社にとって初めてのことではない。
花柄を施した魔法瓶やファッションデザイナーのピエールカルダンとコラボしたシリーズ、イタリアの建築家であるマリオ・ベリーニとのシリーズ、シンプルをコンセプトにしたZUTTOシリーズなど、さまざまな商品を展開してきた。
そんななか、堀本氏は「STAN.」を開発する際に苦労した点について次のように語る。
「従来は商品の企画を考え、デザインに落とし込んでいくプロセスで商品開発を行います。しかし、STAN.の場合、暮らしになじむデザインを最優先にする必要があると考えたので、最初からデザインのイメージから固めていきました。この開発方法は通常と大きく異なりますので、特に商品の設計者は相当の苦労を要したと思います」
デザインで差別化につながると考えた
STAN.はおしゃれ家電の中でも後発組であり、他社にはない価値を打ち出す必要性があった。
ただ、シリーズ化するのであれば、洗練されたデザインやシンプルさを追求しただけでは差別化を図りづらい。そこで目をつけたのが、クリエイティブユニットのTENTから提案された「うつわ」をイメージしたデザインだった。
「うつわのような上に向かってひろがった形状は、これまでタブーとされ、他社にもあまり見られないスタイルでした。業界にないということは、デザイン面で差別化になると考えました。ですが案の定、うつわの形状を再現するのに困難を極めました。
設計は寸法や条件が整っておらず、イチから考えなくてはならない部分が多かった分、設計条件や安全条件などを踏まえてプロトタイプを何度も作り直すほど、試行錯誤を繰り返したんです」