元歌舞伎役者の45歳書店員が語る、コロナ禍での「銀座 蔦屋書店」の日々
オンラインイベントで感じた「ジレンマ」
――コロナ禍でのオンラインイベントの難しさはありましたか?
佐藤:銀座 蔦屋書店ではこれまでも積極的に店内でのイベントをやっていたのですが、それが全部できなくなってしまった時、Zoomなどを使用したオンラインイベントへの取り組みを始めました。
ただ、我々は配信のプロではないため、不十分なものをお客様に見せることの怖さというのはすごくありました。歌舞伎をやってプロとしてお金をいただいていた者としては、ジレンマでもありましたね。実際にオンラインイベントをする時に、見ることができなかったお客様に対して「それは回線の問題です」とか、ほかの要因のせいにはできないと思っているんです。
――なるほど。
佐藤:そこで考えたのが「インスタライブを積極的に使おう」ということでした。実際にやってみて、お金をいただくこともなく、見ることができなかったとしてもお客様に負担が少ないのがいいなと感じました。
でも、普通のオンラインイベントであってもインスタライブであっても、どういった形でもコンテンツとしてしっかり成立させたいという気持ちがすごくあるんです。でも、それには意外に労力がかかるのが悩みでした。
試行錯誤の日々で開拓できたもの
佐藤:また、お客様とコミュニケーションがとれ、盛り上がれるコンテンツという点でコロナ禍での取り組みとしては面白いけれど、お店が再開した時、1人のジャンル担当者がしっかりと売り上げを出し、結果を残すには至りませんでした。
現在はジャンル担当者ではなく、2021年4月より作品の展示メインで担当しており、自分で販促を目的としたインスタライブをやることもなくなったのですが、それまではずっとそういうことが難しいなと感じていました。ですが、コロナ禍によってオンラインでの体験がどんどん生活に浸透するなかで、お客様に新たなご提案をする手法を開拓できたことは良かったですし、今後にもつながるのではないかと思います。
――現在の仕事へのモチベーションはどんなことですか?
佐藤:いまの仕事への自分のモチベーションは色々あって、その中のひとつとして「これしかできない」「これをやっていく」と決めた人を応援したいということがありますね。そこに今の仕事内容はフィットするし、すごくやりがいがあると感じています。