利益1兆円ソニーと崖っぷちの東芝。何が明暗を分けたのか
オリンピックと『鬼滅』の影響が大きかった
デジタルカメラの販売台数増加が影響し、エレクトロニクス分野の営業利益を200億円上方修正しました。背景のひとつに東京オリンピックがあります。
ソニーは東京オリンピックの報道カメラマンの拠点となるインプレスセンター内に、初めてメンテナンスブースを設置。キヤノン、ニコンのカメラ2強と初めて肩を並べたのです。最近では1秒間に30コマの高速連射機能などを搭載してプロ向け機材に力を入れていました。
2020年にAP通信社が全世界のフォトグラファー向けにソニーのαシリーズを導入すると発表しており、カメラマンからの支持を得ていました。エレクトロニクス分野の収益改善が一時的なものではないと断言しており、今後の躍進に期待できます。
そして音楽です。2022年3月期は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のパッケージメディアの売上が大きく貢献しました。2022年3月期第1四半期の音楽分野の売上高は前期比43.9%増の2549億円。これは明らかに鬼滅効果です。そのほか、巣ごもり需要による会員制ストリーミングサービス、2020年11月に7年ぶりとなる新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」を発売したゲーム部門の好調も重なりました。
東芝の3分割案は円滑に進むのか?
ソニーが大復活を遂げた裏で揺れているのが東芝で、2021年11月12日に3分割する戦略的再編を発表しました。東芝は2022年3月期の売上高を前期比9.7%増の3兆3500億円を予想しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響から立ち直ったものの、売上高は2019年3月期の水準まで戻っていません。
ただ、今の東芝の経営陣を苦しめているのは業績悪化よりも、アクティビストファンドの存在です。東芝は債務超過を解消すべく2017年12月に6000億円という超巨額の大規模増資を実施しました。その引き受け先のひとつに、アクティビストファンドとして名を馳せる旧村上ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが混じっていたのです。
アクティビストファンドとは、一定の株式を保有して企業価値を高めるための提案を行う投資家のことです。一時的に業績が悪化した企業の株式が割安の水準になった際に買い付けられることが多いです。東芝は恰好の餌食でした。
エフィッシモ・キャピタルは2020年の東芝の子会社の架空取引を問題視し、ファンドの代表である今井陽一郎氏など3名を社外取締役として選任する株主提案をしました。この提案は否決されたものの、株主総会が適正に行われていなかったと第三者委員会を立ち上げて調査するよう求めました。経営体制はガタガタになります。
アクティビストファンドの影響を受けにくくするため、2021年4月に英国系投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズから買収提案を受けました。CVCキャピタル・パートナーズは、当時の東芝社長・車谷暢昭氏が日本法人の代表を務めていました。それが不透明だという批判の引き金となり、車谷氏は辞任に追い込まれます。