急速に広がった「Qアノン」。スピリチュアルと融合する陰謀論の現在地
オバマは悪魔崇拝で、小児性愛者集団の手先というデマ
Qの投稿は「Q Drop」と呼ばれているのですが、短文なうえにかなり幅広い解釈ができるような表現がされており、掲示板の住民たちはある種のパズルに熱中しました。その結果、彼らが生み出したのが次のような陰謀論です。
「CIAやFBI、ヒラリー・クリントンやバラク・オバマは悪魔崇拝の小児性愛者集団『ディープステート(またはカバール、闇の政府とも)』の手先であり、国際的な人身売買に手を染めている。世界のセレブリティはこうして攫った子どもの生き血から抽出した『アドレノクロム』を摂取して若さを保っているのである。
これを食い止めようとしている勢力が米軍内に存在し、彼らによって擁立されたのがドナルド・トランプである。トランプは闇の勢力と戦う救世主なのだ」
荒唐無稽と言っていいでしょう。ところが、匿名掲示板で奇妙な妄想とも言える陰謀論を生み出す土壌は2017年以前から存在していました。たとえば、Qアノンの先行形態として知られるピザゲート事件がそれです。
存在しない「ピザ屋の地下室」を男が銃撃
2016年に発生したピザゲート事件では、ヒラリー・クリントン陣営から流出したメールに含まれる「チーズ」「ホットドッグ」「ピザ」といった食べ物に関する単語が児童売買を表す暗号であると考えられ、いつの間にか「ワシントンのピザ店『コメット・ピンポン』の地下には児童売春施設があり、民主党の幹部が関わっている」という陰謀論が出来上がっていました。
これだけならネットで生まれた陰謀論や都市伝説で終わりでしたが、2016年12月4日には、なんと銃を持った男がピザ店に現れ、銃撃事件を起こしてしまいました。そもそも、「コメット・ピンポン」には地下室が存在しなかったのですが。
このように、ネットの妄想が重なって生まれる陰謀論は部外者から見ると理解できないほど現実離れしていますが、Qアノンはここ数年で急速に広まり、TwitterやFacebookが規制に乗り出すほどの存在になっています。そして発生したのが、米国議会議事堂突入事件だったのです。
実はこのQアノンは、スピリチュアルとも近い関係にあります。次の節ではQアノンとスピリチュアルの関係について見ていきます。