東証一部企業を一代で築いた男が広めた「ビジネス系スピリチュアル」の実態
自己啓発系スピリチュアルを商品化
舩井は著作で思想を広めるだけではなく、類似の思想を持つ人物の紹介や、現在の科学を超越しているような商品(「本物」商品と呼ばれる)の紹介も行っていました。
その代表が1994年に始まった大規模イベント「フナイ・オープン・ワールド」(FOW)で、そこで紹介された商品を斎藤貴男『カルト資本主義 増補版』(ちくま文庫)から引用してみましょう。
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あらゆる病気の原因になる“活性酸素”の発生を抑制するという健康食品「アオバ」。“波動エネルギー”で食べ物本来の味を引き出すという食器「味来」。“環境や健康に優しい”という新しい栄養補給食品“トリプル”。はめるだけで“正しい呼吸法”ができるようになるという指輪「θリング」。“生命の水”を生むという浄化石「イオンセラミックス」。あらゆる植物を瞬時にして躍動させるという濃縮エキス「ビタナール」、および飲用の「命流美(めるびー)酵素」。気の流れを正常化させ自然治癒力を高めるという機械「氣代謝誘導装置」。“ゼロ磁場の地”丹沢にある“癒しの宿”「七沢荘」……。
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このラインナップを見ると、商品そのものは残っていなくても、理論としては今でも健康機器や健康食品で使われ、疑似科学と指摘されているものが目立ちます。
さらに、舩井は「波動理論」や「EM(有用微生物群)」「脳内革命」も紹介するとともに、著書で「Oリングテスト(人差し指と親指でつくった輪を引っ張って解けるかどうかで善悪を判別するテスト)」や「キネシオロジーテスト(伸ばした腕を押し下げた際の抵抗で善悪を判別するテスト)」「イヤシロチ(生命が活性化する場所のこと)」も取り上げています。
舩井は自己啓発系スピリチュアルとともに、このような商品や理論を広げる役割も果たしました。
舩井幸雄と陰謀論を主張する2人
舩井幸雄が陰謀論と接近していたことについても触れておきましょう。舩井が執筆していたウェブ上の連載では、元『フォーブス』のアジア太平洋支局長で『気象兵器・地震兵器・HAARP・ケムトレイル』(成甲書房)、『3・11 人工地震テロ&金融サイバー戦争』(ヒカルランド)といった著作がある古歩道ベンジャミンや、爬虫類宇宙人陰謀論やユダヤ陰謀論の著作を多く持つ太田龍が紹介されています。
太田龍とは2007年に対談本『日本人が知らない「人類支配者」の正体』(ビジネス社)も刊行しています。
前述したような超科学を求める舩井の姿勢と、陰謀論が主張する「闇の勢力が陰謀に利用する超技術」とが出会っていることがわかります。