安倍昭恵夫人のスピリチュアルな言動に見る、右派も左派もスピと繋がるわけ
スピリチュアルは右派とも親和性が高い
実は、スピリチュアルは右派とも親和性が高いのです。
たとえばスピリチュアル系の人たちを見ていると、日本を「神国」として天皇を礼賛したり、中国共産党を激しく非難するアカウントがあります。ここまでではないにしても、パワースポットとして神社を巡る人は多いですし、勾玉(まがたま)を使ったセラピーもあります。
また多いのは、「元氣」のように「気」を「氣」に置き換えたり、「私」を「和多志」と記述する人たちです(「和多志」で検索してみるとかなりの数いることがわかります)。
「氣」については、「『気』は中が『〆』になっているので言霊(ことだま)パワーが発揮できなくなってしまう。一方の『氣』は中が『米』になっているのでパワーが八方に広がる。日本人はもともと『氣』を使っていたが、言霊パワーを封じたいGHQが『気』に改めさせたのだ」という一種の言霊信仰と陰謀論によるものです。
「和多志」についても同様で、もともと使われていた「和多志」を、GHQが「私」に改めさせたという陰謀論が浸透しています(もちろん、そんなことはありません。戦前の文学を読めばすぐにわかります)。
「仏教伝来以前に遡るべき」という主張
さらに、右派的なスピリチュアルを好む人は、神事で使われる大麻やマコモを神聖なものとして大事にします。マコモとは水辺に群生するイネ科の植物で、菌の寄生によって根元が白く膨らみ、マコモダケと呼ばれる食材になります。こうした人たちからよく聞かれるのが「古神道」です。
スピリチュアル系の投稿で「古神道」という言葉を見たとき、私は「そんなに昔のことがわかっているのだろうか」と不思議に思いました。
というのも、神道は長く仏教と一緒に信仰される神仏習合(神道の神は仏の化身であるとする本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)が代表的です)の時代が続いており、古神道を「仏教が伝来する前の『純粋な神道』」とすると、仏教伝来より前に遡る必要がでてきます。
仏教が伝来したのは6世紀ですが(538年説を覚えるのに「ご参拝」と語呂合わせをした人は多いのではないでしょうか)、これは『古事記』(神道神話が多く収録されている最古の歴史書)の成立(8世紀)よりも早いのです。
つまり、最古の神道聖典である古事記が成立した時点ですでに仏教は伝来していたわけです。ここからさらに遡った神道の姿、いわゆる神祇信仰(じんぎしんこう)がどの程度明らかになっているのか疑問だったのですが、スピリチュアル関連の本を読むと、どうもここで言われる古神道とは神祇信仰ではなく、平田篤胤(ひらたあつたね)に端を発する霊学の流れのようです。