選挙ポスターから“笑顔”が減った?選挙グッズ会社の緻密すぎるノウハウを聞く
選挙の景色を一変させた「マスクの有無」
――コロナ禍で注文が伸びた商品はありますか?
田村:マイクカバーですね。これまでは、使わないという人がいたり「選挙っぽいからかぶせてる」という人もいました(笑)。ですが、感染対策で、定期的に変えたり1人1枚というケースが増えていますね。あとは、手袋も交換の回数が増えていますし、選挙カー内の間仕切りも増産傾向です。
新たに生まれた商品でいうと、オリジナルデザインのマスクですね。顔を売らなくてはいけない選挙活動ですが「マスクで顔が見えない」という声が現場から上がったんです。今回はコロナ禍で初の解散総選挙でしたので、マスクの有無は選挙の景色を一変させましたね。コロナ対策を強く訴えている候補者なら、ポスターの写真でも「あえてマスクで撮影する」ということがあってもいいかもしれませんね。
――逆に、注文が減った商品はありますか?
田村:コロナに無関係ですが、今回は新規の立候補者が50人くらい減ったんです。なので、初出馬の方が発注される商品は少なかったですね。たとえば、看板は1回で捨てるのはもったいないですから、当選しても持っていらっしゃる方は多いですよ。拡声器も一度購入されたら、次の選挙では購入しないので発注は減りますね。ただ、野党の候補者の中には政党がロゴやイメージカラーを色々と変える度に新調する方も少なくないです。
選挙を通じて日本を変えていきたい
――「時代が変わった」と感じることを教えてください。
田村:「クラウドファンディングで選挙カーを調達する」という候補者がいまして、なかなか目標金額を達成できなくて、納品を何日も待たされたことがありました。外装なども施さないといけないので、本当にギリギリになって大変でした(笑)。
――選挙用品を通して、この先社会とどう関わっていきたいですか?
田村:選挙と政治は別物だと考えていますが、とても関わりが深いので、「選挙を変えて政治を変えて日本を変えていく」ができればと思っています。公職選挙法は、公平な選挙のためにありますが、私たちは業者という立場からそれを支えて補完していきたいです。
たとえば新人議員とベテラン議員ではあらゆる点で格差がありますが、グッズでの表現でその差を埋めて、より公平な選挙になっていけばと思っています。公職選挙法の一翼を担っているという自負を持っていますよ。
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変化が見えにくいようにも感じていた選挙の世界。しかしそこにも、変化とブームがありそれによって当落が変わる。そうなると日本の未来がわずかでも変わっているということになる。まさに裏方ではあるが、確かに日本を支えている存在がここにあった。
<取材・文/Mr.tsubaking>