有村架純と志尊淳を「本当に2人だけに」。話題作を生む名物Pに聞く、驚きの“演出”
俳優もエッセンシャルワーカー
――2人が本音で語り合う、とても印象的なシーンですね。
河村P:あれはスターサンズの事務所で撮ったんだけど、最初、森ガキ監督は、きちんと部屋をセッティングしようとしていた。でも「そんなことは絶対するな、そのままでいいんだ」と伝えました。事務所のなか、そのままで。そして、「絶対に誰も介入するな、本当に2人だけにしろ」と。
僕はその日、わざわざ別の用事を作って、2人には会いもしませんでした。うちの事務所でやっていましたから、有村さんも「今日、河村さんはいらしてないんですか?」と驚いていましたね。
――2人だけで話をしてもらうというのは、河村プロデューサーのアイデアだったんですね。
河村P:そう。2人で自由にしゃべってもらった。そこで悩み苦しんでいることを正直に吐露している2人の姿を見て、「これはイケる」と思いました。「これがいいんだ」と。つまりは、取材をした彼らもエッセンシャルワーカーなんです。
――ただのインタビュアーではなく、2人が自分事として悩んだ。
河村P:2人の苦悩が出ていた。そして俳優という職業の本質的な部分にまで迫ったシーンになりました。
今の政治にはビジョンがない
――プロデューサーというと、内容には介入しない方もいると思うのですが、河村プロデューサーはかなり内容にも意見されるんですね。
河村P:もちろんそうです。大きな会社のプロデューサーと、私とでは全く違いますし、私は本来的にはプロデューサーというのは一気通貫じゃないといけないと思っています。企画の段階から、ポスターのイメージも考えているし、タイトルも決める。
『パンケーキを毒見する』も最初にタイトルを決めていたし、『ヤクザと家族』(2021)なんかは、かなり前から企画とタイトルがあったんですよ。『ヤクザと憲法』(2016)を真似たとか言う人もいたんですが、相当前から考えてたんです。
――一気通貫とのことですが、河村プロデューサーが、多くの人の上に立って動かしていく上で大切にしていることはなんでしょうか。
河村P:会社としてビジョンを持って、その方向に向けてやっていくということですかね。それをしていると、必然的にスターサンズの映画に関わりたいという人が増えてくる。
そういう意味では、今の政治って全くといっていいほどビジョンがないですよね。政治は目先のものを考えるだけじゃない。よく政治家さんは「成長」という言葉を使いますが、はっきりいって今、成長なんてないですよ。もうフロンティアがないから。手詰まりです。
本来は、「今のままではダメなんだ」とはっきりとモノを言って、下降していくなかで何ができるのか、どういう夢を持てるのかを出すべき。そのなかでもひとつの大きな役割が文化と芸術、映画なんかだと思います。