なぜ少子高齢化は止まらない?消費税以上に重い“負担”の正体
現行の医療制度の問題点は?
一方で、前回の記事では、社会保障支出の増加傾向を是正すべきだという指摘もあった。緊縮財政への強い反対姿勢と一見矛盾する、そうした指摘の真意について、改めて問いただしてみたところ、
「日本の医療制度は高齢者医療無償化が導入された1973年以降、高齢者の自己負担割合が最も低い構造が続いてきました。このことと、民間つまり営利企業主体という医療機関の構造が相まって、高齢者向けに過剰な医療サービスが提供されるようになっています」
との答えがあり、続けて現行の医療制度の問題点を指摘する。
「こうした傾向には2つの問題があります。1つ目の問題は、医療機関の経営資源が高齢者向けに集中すれば、どうしてもそれ以外の人々、特に子供や乳幼児向けは手薄にならざるを得ず、それによって少子高齢化が助長されていることです」
高齢者の医療費負担は引き上げるべき
「生物学者の知見によれば、人類も含めた有性生殖を行う生物にとって、上の世代が死ぬことには『より多様性に富んだ下の世代の構成比を高めることによって、種としての持続性を高める』という“意味”があります。つまり、少子高齢化を助長し、高齢者を過剰に延命することは、そうした自然の摂理に反し、社会そのものの持続性を危うくすることとも言えるのです」
この意見は、高齢世代は医療が手薄になっても仕方ないようにも聞こえ、にわかには首肯(しゅこう)しづらいが……島倉氏はこう続ける。
「もう1つの問題は、そうした過剰な医療サービスが、顧客すなわち患者である高齢者の人生にとっても、決してプラスにはなっていないことです。むしろ、病床という生産設備の稼働率を高めるという企業経営の論理を背景として、不必要な入院を医師から勧められ、かえって寝たきりになってしまったり、そのまま自宅ではなく病院のベッドで亡くなる人が増えているといった弊害を助長していることが、医療関係者からも指摘されています」