楽天、赤字654億円の中間決算。収入は盤石でもモバイルへの投資がハンパない
3)モバイル事業:500万回線も対象エリアは…
モバイル事業は2019年度から決算資料に加わった事業です。ちなみに同社は2014年からNTTドコモの回線を利用したMVNO事業として楽天モバイルを始めていましたが、2019年度からは自社で回線網を整備するMNO事業者としてスタートし、モバイル事業として独立しました。
同サービスは19年10月から先行サービスが開始され、2020年4月から正式なサービスとなりました。出だしは順調で、2か月後には契約申込件数が100万を突破し、年末には200万を突破しました。そして先に述べた通り、今年8月には500万回線を記録しています。
楽天モバイルが注目された背景にはデータ通信料の安さがあげられます。20GB以上はどれだけ使っても税抜2980円と定額なうえ、3~20GBまでなら1980円と段階的に安くなります。楽天回線エリア外で使うと5GB以上で通信制限がかかりますが、最大1Mbpsと他社の通信制限と比較して早い水準です。
新しいサービスなので自社回線網の対象エリアが気になるところですが、東京・大阪・名古屋はもちろんのこと日本各地の都市部は対応しており、さすが楽天の資金力といったところです。
赤字の原因はモバイル事業への投資
EC、金融、モバイルで拡大を狙う同社の成績を見ていきましょう。公式HPによるとグループ全体の売上収益は2018~2020年度まで1兆1015億円⇒1兆2639億円⇒1兆4553億円と伸び続けている一方、営業利益は1704億円⇒727億円⇒-938億円と2019年度は大幅減収。コロナ禍の2020年度は赤字に転落してしまいました。
2019年度はEC市場の好調によってEC事業が増収となりましたが、配送料値上げや拡大に伴う投資によって減益となったようです。フィンテック事業は楽天市場の好調に支えられた楽天カードが伸びたため事業全体では増収増益となりました。なお楽天モバイルに関してはMNO事業に転換後のスタートダッシュが早く、大幅増収を記録しています。
コロナ禍の2020年度は巣ごもり需要に支えられたECが伸び、インターネット事業の収益が10%増えましたが、楽天トラベルの不調などが影響し、大幅減益となりました。そしてECに牽引されたフィンテック事業は2019年度と同じく好調だったものの、モバイル事業は2271億円の収益に対し、セグメント損失は2269億円と大幅な赤字を記録してしまいました。
モバイル事業の赤字が全社業績を悪化させた形ですが、これは基地局の開設など拡大に伴う投資によるもので、将来的に収益化できれば問題ないといえます。最新2021年度2Qの売上収益も7936億円と前年より17%高いペースで成長しており、四半期損益は-654億円と、依然モバイル事業への積極投資を進めていることがわかります。