西武は大苦戦、東急はまだマシ。首都圏私鉄7社のコロナ苦境の業績を解く
商業施設メインの東急は?
東急電鉄は渋谷から南西方面に計8路線を展開しています。中央林間までを走る田園都市線、横浜まで走る東横線、大井町~二子玉川間の大井町線などがあります。
東急電鉄は株式会社東急の100%子会社であるため、東急の業績を見ていきましょう。2020/3期と2021/3期の営業収益は1兆1642億円⇒9359億円と、京王や小田急より少ない20%の減少幅となりました。一方で営業利益は688億円⇒-317億円とこちらも赤字に転落しました。
東急が他と異なるのは商業施設に関連する生活サービス事業に重点をおいている点です。同事業は売上高の64%を占め、東急百貨店やを東急ストアなどを展開しています。ちなみに交通事業は16%、不動産事業は21%を占めます。2021/3期は交通事業が3割近く、生活サービス事業が15%の減収となりました。
生活サービス事業の減収幅が京王や小田急の流通業より小さくなった背景には、スーパーの東急ストアなどコロナ禍でも必需性の高い店舗を展開していたためと考えられます。最新の2022/3期1Qは営業収益1992億円と前期の2098億円より減少してしまいましたが、会計基準の変更によるものです。
レジャー事業の悪化が厳しい西武鉄道
西武鉄道は新宿を起点に川越へ向かう新宿線と、池袋から秩父へ向かう池袋線・西武秩父線が主な路線です。西武鉄道は西武HDの100%子会社であり、HDの傘下にはプリンスホテルや西武園ゆうえんち、八景島シーパラダイスなどのホテル・レジャー施設のほか、不動産事業も展開しています。
2020/3期と2021/3期の営業収益はそれぞれ5546億円⇒3371億円とコロナ禍で39%も減少し、営業利益は568億円から-516億円の赤字転落となりました。上記の京王、小田急、東急3社以上に業績が悪化しています。こうした背景にはホテル・レジャー事業の依存度の高さがあります。
2020/3期の時点で営業収益の38%を占めるホテル・レジャー事業の収入は2021/3期に63%も減少してしまいました。一方で鉄道やバスなどの都市交通・沿線事業は他社同様、3割程度の減少幅しかなく、ホテル・レジャー事業が業績の重荷となったようです。
今期2022/3期1Q(4~6月)の成績は営業収益918億円と前年の663億円より回復していますが、こちらもコロナ以前の水準には達していません。レジャー関連事業の回復はコロナ収束後まで待たなければならないでしょう。