ワクチン接種義務化で対立が進むアメリカ、「家族や友人間が分断」の背景
ワクチン接種者 vs ワクチン未接種者の声
米国人と在米日本人はワクチンについてどう思っているのだろう。今回筆者の周囲に「ワクチン接種を済ませたか?」と聞いてみた。回答からそれぞれの言い分が見えてきた。
【ワクチン接種者の声】
「2021年1月と2月にモデルナ社のワクチンを接種した。接種した理由はすべての医療専門家がコロナ感染の予防はワクチンしか方法はないと勧めていたから。接種して100%安全を実感。しかし、接種をするのは個人が決めることだとも思っている」(Designers and Agentsのオーナー、エド・マンデルバウム氏)
「接種できると聞いてすぐに接種した。2021年1月と2月に接種したのはモデルナ社のワクチン。接種できてうれしい。家族や友人たちの全員がワクチン接種済み。1年間のロックダウン後にワクチンを接種して、大きなストレスがなくなった。とってもホッとしている!」(Ron Robinson Inc.の社長、ロン・ロビンソン氏)
「社会人として社会を守るために、できるだけ早く、ファイザー社のワクチンを接種した。接種後の副作用は1回目も2回目もなかった。感染する心配はあるが、重症化したり死んだりすることはないから安心している」(California State University Long BeachのAsian Art History教授、ケンダル・ブラウン氏)
「2021年4月にファイザー社のワクチンを接種した。接種したので安心している。マスク着用していたとしてもワクチン未接種者は信用できないので、ワクチン接種は必要」(Trip Sales Inc.のCEO、ティア・ハーグローブ氏)
「ファイザー社のワクチンを接種した。が、10代の娘のことがとても心配。今、健康だし、ワクチンが必要なのか? 娘が子どもを産む時にワクチンから何らかの影響があるかも? 知り合いの30代の健康だったアスリートがワクチン接種後に心臓に問題を起こしたので、色々心配になっている」(グラフィックデザイナーのエイミー・オールレッド氏)
一方でワクチン接種懐疑派の声も聞いてみた。
【ワクチン未接種者の声】
「接種をまだしていない理由は、どのワクチンもFDAから正式な承認が得られていないこと、長期にわたる治験がされていないので数年後の健康被害が分からないこと。接種済みの母をはじめ、兄弟や友人たちが感染を広げているのは私みたいな未接種者なんだと責めてきて辛い。ワクチンは家族や友人間を分断させる」(L.A.在住のアメリカ人主婦)
「ワクチン賛成派とワクチン反対派は、民主党支持者と共和党支持者にほぼ比例している。民主党支持者の多くは“ワクチンを接種していない人のせいでウイルスがなくならない” と怒りを表していて驚く。ワクチンを接種した人のほうが、ワクチンを接種していない人に近づきたくないと恐れていることもあり、色々な矛盾を感じる。現在、ワクチン賛成派と反対派の意見が分かれているが、お互いに攻撃的になるのではなく意見の違いを尊重できる環境にいたい」(L.A.在住の日本人女性起業家)
「私の周りでは、自分で進んで接種した人が4割、生活に支障が出るために接種した人が5割、未接種の人が1割くらい。とにかくワクチン未接種者の人権がどんどんなくなっているようだ」(ニューヨーク在住の日本人女性ファッションデザイナー、ラン・エンダ氏)
米国の国民の5割が完全にワクチン接種済み
CDC (Centers for Disease Control and Prevention / 米国疾病予防管理センター) の「ワクチン接種状況の統計サイト」を見ると、2021年8月15日現在で国民がワクチンを1回接種した成人の割合は72%、2回とも接種した成人の割合は61.7%。65歳以上で1回接種した人は90.9%、2回接種した人は80.8%と割合が高くなる。12歳以上の子どもも含めると、50.7%の1億6836万2058人が完全に接種済みという。
ワクチン接種が進み始めた2021年の春頃は、感染者数と死者数が減っていたのだが、7月中旬になってデルタ株が増え出した頃から、再度、感染者数と死者数が増え始め、2020年3月のコロナ禍が始まった時期を彷彿させる状況になりつつある。
ただし、ワクチン接種者はコロナに感染しても無症状または軽症がほとんどで、現在の死者は子どもや若者が目立ち、ワクチン未接種者がほとんどだと日々報道されている。米国の2021年8月13日までの入院者数は1週間前より25%上がり76,668人、死者数は1週間前より31%上がり61万8,591人となっている。